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2013年10月31日 (木)

“都市の世紀”と“世界農業遺産”

 ウェールズ通信制大学院環境学部の卒業生の有志で年数回OB交流会を開催している。
私はデュプロマ終了の後中退して卒業していないのだが、幹事の方より誘いを受け、昨年より参加するようになった。
参加していると刺激を受け、また勉強になることもあって良いのだが、順番で開催地が私の地元(石川県)に回ってきた。
色々考えたが、2010年に“能登の里海里山”“トキと共生する佐渡の里山”が、日本最初の世界農業遺産に認定されたので、“能登の里海里山”を今回の交流会のテーマとすることを提案した。
恩師の急なご逝去、台風26号の接近による列車遅れなど思いもよらぬトラブルもあったが、先週10月26日・27日輪島で無事OB交流会を開催することができた。
この交流会を開催する前は、私自身“世界農業遺産”とは何なのか、どんな意義があるのかよく理解していなかった。
この交流会を開催することは、私自身とって人間の生存環境の保全や生物多様性について勉強する機会にもなった。
 
 世界農業遺産とは、Globally Important Agricultural Heritage Systems(GIAHS)と言い、グローバ化、環境悪化、人口増加の影響により衰退の途にある伝統的農業や文化、土地景観の保存と持続的な利用を図ることを目的に、FAO(国際連合食糧農業機関)が2002年に開始したイニシアティブです。
21世紀は「都市の世紀」と言われている。20世紀以来、世界の人口は爆発し、まもなく90億人に達する。

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また、地方から都市への人口移動が進み、2050年には、その90%が都市に集中するということである。
この都市住民を食べさせるため、これからの農法は、地下水の組み上げや灌漑による大規模農法、遺伝子組み換え食品等の工場生産が進むと予測されている。しかし、これだけやっても、都市の住民を十分に食べさせるだけの量にはならない。
 
 紀元前、メソポタミア文明は、高度な灌漑システムを持っていたが、ユーフラテス川の塩分を含む灌漑水により、永い間に耕作地に塩分がたまり、農地が荒れて文明は滅亡した。
南米では、紀元4世紀から7世紀にかけて高度な天文学と利水技術を持つマヤ文明が栄えていたが、漆喰を作るための過度の森林伐採と気候変動による干ばつが重なって文明は滅亡したと言われている。
この例から見て、21世紀「都市の世紀」の農法は持続可能なのだろうか。帯水層の枯渇や気候変動による表土の侵食によって、メソポタミア文明やマヤ文明と同じ路を辿ることになりはしないか。
そうならないとしても、人間はアフリカの森から誕生した。森を離れて都市という自然とかけ離れた世界で暮らすことになった人間は、人間本来の正常な心を保つことができるか。
今回の交流会を企画して感じたことは“世界農業遺産”とは、「この問題に対する一つの保険ではないか」と思った。

 

第1日目(26日)は、“白米の千枚田”を見学した。

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ここでは、輪島あかり人というボランティアガイドに案内してもらった。
千枚田には、現在千枚に小さな棚田がある。ちなみに江戸時代には三千枚あったそうである。
千枚田というと、景勝地として有名であるが、農業遺産としての本当の意義は“都市と農村を結ぶ持続可能性を追求したシステム”にある。
ここは小さな田の集まりで、農耕機械が入らず昔ながらの手作業でしか稲を育てる事ができない。
千枚田の面積は1.8ヘクタール、千枚田での収穫量は合計約200袋、30kgだそうである。普通、米の反収(約10アール当たり)は45袋、500kg位と言われているので相当に少ない。食料生産という面から見ると価値はない。

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しかし、現在、千枚田の各田の殆どは全国の都市住民がオーナーとなっており、田植え、稲かりなど都市からオーナーが千枚田に来て耕作する。
このことにより、経済に現れない別の価値が生ずる。都会から来た人は、都市生活に欠けている自然景観・きれいな空気・癒やしを味わうことができる。手づくり農法であるから、作った米は、減農薬である。小さな田んぼで山水で育った米は小粒で旨い。
また、生物多様性や景観保全の大切さという子どもに対する教育的効果もある。
このシステム、そのものが農業遺産なのだ。
 
2番目に行ったところは、珠洲の揚げ浜塩田である。

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現在、食塩の大部分は食塩製造工場で海水をイオン交換膜によりろ過して製造されている。
ここでは、500年前と同じ方法で、海から水を汲み上げ蒸発させ、残った水を釜で煮詰めて塩を作っている。海水を煮詰めるときの燃料は、近くの木材や廃材である。この方法では化石燃料を使わないという点で持続可能な製法である。
できた塩には、ミネラルがたっぷり含まれており味わいがあり、都会の人にやすらぎを与えることができる。
 
もう一箇所行ったところは、輪島の朝市である。

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輪島の朝市は平安時代から続くもので、神社の祭礼日の生産物を持ち寄って物々交換をしあったのが始まりという。
距離にして300mくらいの道の両側に海産物、輪島塗り、手づくり民芸品などを売っている。
ここでは、物々交換のなごりか、値段はあってないようなものだということ。同じような輪島塗りの箸が場所によって相当に値段が違う。値段は交渉で決めるというのがルールらしい。
掘り出し物を探すと言った感覚で散策できるのが楽しい。
 
以上、私の勝手な感想を書きましたが、参加いただいた皆様、ご協力いただきありがとうございました。

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コメント

世界農業遺産 の千枚田 昔からの汲み上げ式塩田への訪問 UW OB交流会は 西村さんの時間をけられた準備と 素晴らしい 企画で参加者全員 里山里海の 大切さ持続可能な仕組みの更なる構築を学ばれたと思います。

投稿: 竹本秀人 | 2014年1月14日 (火) 08時30分

竹本様
この度は、UW OB交流会の皆様に過分の褒め言葉で紹介いただいたようでありがとうございます。
最も勉強になったのは、企画した私の方です。
今後とも、よろしくお願い致します。

投稿: がまがえる | 2014年1月14日 (火) 15時56分

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