“都市の世紀”と“世界農業遺産”
ウェールズ通信制大学院環境学部の卒業生の有志で年数回OB交流会を開催している。
私はデュプロマ終了の後中退して卒業していないのだが、幹事の方より誘いを受け、昨年より参加するようになった。
参加していると刺激を受け、また勉強になることもあって良いのだが、順番で開催地が私の地元(石川県)に回ってきた。
色々考えたが、2010年に“能登の里海里山”“トキと共生する佐渡の里山”が、日本最初の世界農業遺産に認定されたので、“能登の里海里山”を今回の交流会のテーマとすることを提案した。
恩師の急なご逝去、台風26号の接近による列車遅れなど思いもよらぬトラブルもあったが、先週10月26日・27日輪島で無事OB交流会を開催することができた。
この交流会を開催する前は、私自身“世界農業遺産”とは何なのか、どんな意義があるのかよく理解していなかった。
この交流会を開催することは、私自身とって人間の生存環境の保全や生物多様性について勉強する機会にもなった。
世界農業遺産とは、Globally Important Agricultural Heritage Systems(GIAHS)と言い、グローバ化、環境悪化、人口増加の影響により衰退の途にある伝統的農業や文化、土地景観の保存と持続的な利用を図ることを目的に、FAO(国際連合食糧農業機関)が2002年に開始したイニシアティブです。
21世紀は「都市の世紀」と言われている。20世紀以来、世界の人口は爆発し、まもなく90億人に達する。
また、地方から都市への人口移動が進み、2050年には、その90%が都市に集中するということである。
この都市住民を食べさせるため、これからの農法は、地下水の組み上げや灌漑による大規模農法、遺伝子組み換え食品等の工場生産が進むと予測されている。しかし、これだけやっても、都市の住民を十分に食べさせるだけの量にはならない。
紀元前、メソポタミア文明は、高度な灌漑システムを持っていたが、ユーフラテス川の塩分を含む灌漑水により、永い間に耕作地に塩分がたまり、農地が荒れて文明は滅亡した。
南米では、紀元4世紀から7世紀にかけて高度な天文学と利水技術を持つマヤ文明が栄えていたが、漆喰を作るための過度の森林伐採と気候変動による干ばつが重なって文明は滅亡したと言われている。
この例から見て、21世紀「都市の世紀」の農法は持続可能なのだろうか。帯水層の枯渇や気候変動による表土の侵食によって、メソポタミア文明やマヤ文明と同じ路を辿ることになりはしないか。
そうならないとしても、人間はアフリカの森から誕生した。森を離れて都市という自然とかけ離れた世界で暮らすことになった人間は、人間本来の正常な心を保つことができるか。
今回の交流会を企画して感じたことは“世界農業遺産”とは、「この問題に対する一つの保険ではないか」と思った。
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