2006.03.26

学習する組織 その3 自己実現

学習する組織 5つの能力 の中で、成果を左右するものは「システム思考」です。
しかし、組織は「システム思考」を身につけようとしても何から手をつけてよいかわからない。
ここでは、自己実現→メンタルモデル→共有ビジョン→チーム学習→システム思考 の順番で手順を追って考えて行きます。

2004年5月の私のブログ「エンパワーメントの矛盾と幻想」で述べたように、これまでトップ(又は上司)が具体的に指示を出し、社員はこれに従うと言う形で仕事が進められてきた組織では、今になって自立型人間(自分で考えて仕事をする)と言ってみても、社員は戸惑い混乱するだけです。

vision社員個人々人の中に、自分は何をやりたいかと言う個人ビジョンを自覚させ、そのビジョンと現状の間に緊張感を持たせることが学習の第一歩です。
 
このことを、クリエーティブテンションと言う。
 

クリエーティブテンションを社内に広げ維持していくためには、次のことが必要になる。
1.リーダーの立場にある人々が自ら見える形で、自分自身のビジョンを明確にし、事実に対して真摯な態度をとること。
2.部下に対して、各人が自己ビションに気づくようコーチすること。
3.社員各人が、自己ビジョンに従って行動しようとしたときに生ずる障害をなくすること。

フィールドブックでは2項の自己ビジョンの明確化のやり方を、例をあげて紹介しています。
下の「個人の価値観チェックリスト」は、その一つの例です。

やり方:
(1)チェックリストから自分が大事と思う項目を10個選んでください。
(2)選んだ10個から、5個を捨ててください。
(3)選んだ5個から4個を捨ててください。
(4)残った1個があなたが最も大事にしている価値です。

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情(愛と思いやり)  社会奉仕    権威と権力   秩序(静穏、    富
安全         自由      公益事業     安定、遵奉)   内的調和
意味のある仕事   宗教      誠実さ     知的水準      肉体的な挑戦
エコロジーの意識  純粋さ     成長      着実さ        人助け
オープンで正直(な 正直さ     責任      興奮         ひとりで仕事
人と一緒にいること) 昇格・昇進   専門性    効率           をする
お金        承認(他者からの 洗練     個人の成長(自分 評判
落ち着き     尊敬、地位)  相互依存性    の能力をフルに  プライバシー
快楽        真実       創造性       発揮して生きる) プレッシャーの
時間的自由   スピードのある生活 卓越性   国家          もとで仕事する
自己尊重     家庭をもつこと  他者とともに仕事 コミュニティ   変化と多様性
仕事の安定性   競争        をする    困難な課題      冒険
仕事の速さ     協力       他者の管理  コンピテンス     民主主義
市場での地位   密接な関係    他者への影響 参加       名声
自然        経済的安定性   達成     忠実さ        有効性
質の高い人間関係 経済的収穫   知恵     道徳的習慣     リーダーシップ
自分が参加するも 芸術        知識     土地         利益
 のの品質    決断力      
---------------------------------------------------------------------------------

私も試した見たところ、私の上位3項目は
 「正直さ」 「個人の成長」 「家庭」
と言う項目になりました。

私自身、「正直さ」と言うのは自分ではこれまで考えてみませんでしたが、演習をしてみて心の奥底ではそのような気持ちを持っていたことに気づきました。
これは、誰がやってみても比較的上位にくる項目かも知れませんね。

3項の「社員各人が、自己ビジョンに従って行動しようとしたときに生ずる障害をなくすること」に対して、この「正直さ」と言うことに会社が配慮しないために、色々問題を起しています。
多くの会社の規範は「正直さ」よりも会社への「忠実さ」を求めている。 このため社員は本当のことがいえなくなり、何かをキッカケに爆発する。 最近の起きた、三菱自動車や雪印の欠陥問題、欠陥建築問題などここのことに関する話題にこと欠きません。

一方で、この問題に上手にしている企業が高い成果を上げているようにも見えます。

例えば、トヨタ自動車では生産や品質上の問題を「あんどん」「さらし首」と言った形で真実を表面に出すことを奨励している。
また、サービス業ではリクルート社の「何でも自由に言える社風」と言うのも有名です。

学習する組織を目指す会社においては、個人の自己ビジョンを顕在化させ、会社の中で、その達成を妨げないような「しかけ」「社風」を作ることが重要です。

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2006.03.15

学習する組織 その2

学習する組織の5つの能力に入る前に「学習する組織」とは、そもそも何なのかを考えてみる。

ピーターセンゲ教授の定義では
「人々が継続的にその能力を広げ、望むものを創造したり、新しい考え方やより普遍的な考え方を育てたり、人々が互いに学びあうような場」「人々が強い意欲を持ち、コミュニケーションの方法を学びながらシステマティックなアプローチによって共通のビジョンの実現を目指すチーム組織」
となっている。

基本はチームである。チームの集まりが組織となる。

学習する組織の特徴

一つは組織における人間関係の親密さである。
昔から(今でもそうかも知れないが)日本では、5時から帰りに一杯のみながら仲間と仕事の話をする。これができないと一人前の仕事ができないようにいわれてきた。
このような人間関係は大切ではあるが、ここで言っているのは、飲まなければ云えないのではなくて、しらふの状態で上下へだてなく気楽に、深刻な話をし合える関係になっている。
と言うことである。

二つ目は、権限の共有化である。
命令によって仕事をするのではなく、共通のビジョンのもとに一人ひとり個々に、或いはチームとして意思決定をするが、結果に対して「共同責任」をもつと言う関係にある。

そして、組織内では常に下図のようなチーム学習の輪が廻っている。
この学習によって、個人とチーム力が向上し、結果的に卓越した業績を残すようになっていく。

 L_O01

そのようなチームが持っている基本的な能力が、次の5つの能力である。

・システム思考(systems thinking):ビジネスにおける構造的相互作用を把握する力
・自己実現(personal mastery):メンバー1人1人が自己を高める意志を持つ
・メンタル・モデルの克服(mental models):凝り固まったものの考え方を克服する
・共有ビジョン(shared vision):個人と組織のビジョンに整合性を持たせる
・チーム学習(team learning):対話を行うスキルと場を養う

最初に発行された「最強組織の法則」では、さまざまな事例をもとに学習する組織の5つの能力を解説している。この中で、中心となるのは「システム思考」ですね。

また、フィールドブック「学習する組織―5つの能力」では、組織は、どのようにしてこれらの能力を習得するかを紹介している。

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2006.03.10

学習する組織 その1

 今日は東京でJQAA夜間大学(日本品質協議会アセッサーの勉強会)で「学習する組織」の勉強会がある。
明日はEA21の審査人研修会があるので、前日に出かけて参加した。
この勉強会は昨年も行なわれたが、今年は3月、4月の2回に分けて行なわれ、今日はその第1回目である。
18時に御茶ノ水 総評会館に行くと60人位が集まっていて、ほぼ満席。

ピーター・センゲの学習する組織「5つの能力」フールドブックを購入し事前に目を通して出かけたが何しろ分厚いテキストなので十分理解できない。
一昨年以来JQAA理事の自主学習会があり、その学習結果をもとに寸劇・ワークショップなどを織り交ぜて紹介していただいた。

「学習する組織」は米国の経営手法で、特にサービス業や研究開発においては有力な武器となる方策であると聞いている。その歴史的経緯は、次の3つの流れからきている。
・1980年代の日本発 経営革新の手法 TQC、QCサークル
・1978年 クリス・アージリスドナルド・ショーンによる組織学習
  1983年 アリー・グースによる長寿企業の4つの法則「企業は生き物である」
・1960年代から研究された システム・ダイナミックス
これらの理論をもとに、MITピーター・センゲ教授が「学習する組織の考え方」を研究した。
1990年研究結果を「最強組織の法則」で発表し、世界的ベストセラーとなった。
なお、日本ではこの著は1995年に発行されている。

その著の読者より、では、前書の最強組織はどうして作るのかと言う問い合わせが数多く出され、その4年後にその方策(フィールドブック) 学習する組織「5つの能力」が発表された。

その書に従って組織改革を進めていくうちに、推進上の幾つかの課題が出てきた。1999年その難問についての解決策を提示したフールドブック 学習する組織「10の変革課題」が発行された。
なお、この書は日本では2004年に発行されている。
これらの書は、このブログの左下に本の紹介がありますので興味のある方は見てください。

 私自身、学習する組織「5つの能力」のフールドブックを購入し、勉強を始めたばかりです。
このブログに連載で、自分の勉強をかねて、感じたことを紹介させていただきます。

学習する組織が必要な能力、5つの学習領域は「自己実現」「メンタルモデル」「共有ビジョン」「チーム学習」「システム思考」です。
フィールドブックでは、これらの領域をペンタゴンの図で表示しているが、理解を深めるための饅頭のように表示したのが下図です。

   image2
               出典 JQAA理事ワーキンググループ

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2006.03.02

つくる-考える-気づく-やって見る

 今日は金沢日航ホテルで開催された 産学連携「製造中核人材育成事業報告会」 に参加した。
趣旨は、2007年の団魂の世代の一斉定年退職に向けて、製造業の技術の伝承をどうするかという命題に向かって経済産業省の支援を受け、金沢工業大学と地元企業との連携で開発した人材育成プログラムの紹介と研修人員派遣の呼びかけであった。

内容は、講演、人材育成プログラムの紹介、パネルディスカッションで午後1時に開催され4時半に終了した。
100名の会場に9割程度の入り、PRの割りには参加者が少ないようだ。
聞いていて自分が興味を引いた点を次にのべます。

以下は金沢大学の飯島先生の話です。
 最近中国の深センに行ってアップルの生産工場を見た。女子社員がチームを組んで本当に無駄なく作業が行われていた。そして、各チームのQCDの成績が別の場所に表示されコンテストが行われている。本当に効率的である、でもこれは工場労働者の負担の上に成り立っているのではないかと思い尋ねると「大丈夫です。中国にはどれだけでも人はいますから」ということだった。
でも、日本ではこんなことはできない。
日本では、もっと付加価値の高い生産工程を作っていく必要がある。たとえば、昨年、金沢IT活用優秀企業として谷田合金さんを表彰した。谷田合金さんでは、アルミ鋳物を受注から加工完品までやっている。そこではCADAMを用いて生産計画を組んでいるが、生産計画は社員誰もがいつでも変更ができるようになっている。顧客の要望に応じて臨機応変に日程を組み変えたり、自分の能力に仕事の担当を変わったりできるようにしている。
このような、顧客のニーズに気づき社員自らが工夫できる生産工程というのもひとつの回答ではないか。
――――――――――<話はここまで>――――――――――

実は、自分は7~8年前勤めていた会社が谷田合金さんと取引があり、生産工程を見せてもらった事がある。そのとき、確かにそうなっていたのを思い出した。

この話の関連で、ベアリングのローラーを作っている(株)東振の中村専務の話も面白かった。
東振では、「つくる ― 考える」ということを徹底しているということです。
 
「学ぶ ― つくる」ではないですね。 作ってから考えるということから新しい気づきを発見する。
「ものづくり→人づくり→価値づくり」という連鎖が強い日本の中小製造業を作るということでしょうか。

なぜ、こんなことを思ったかというと、私が別に受講したALセミナーの内容と似ていて共感したからです。
以下に自分のALセミナー、課題レポートの一部をお見せします。

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10.スキル開発におけるOff-JT/OJT/ALの特徴と違い
  私がアクションラーニングに取り組んだ直接のキッカケはスキル向上だったので、ここでは、スキルアップ研修、ビジネスコーチングを使ったOJT、アクションラーニングの違いを比較して見ます。
比較の前提として次の想定をしました。
①スキルアップ研修:
 1週間程度Off‐JT形式の研修で、カリキュラムは次のようにする。
 テーマ説明→集合スキル研修→演習→集合スキル研修→実習→発表会
②ビジネスコーチングを使ったOJT:
 上司による初期目標設定のコーチング(目的、現状認識、目標、行動計画、意思確認)→ 業務実施→クリティカルな場面を捉えたコーチング→効果確認
③アクションラーニング:
 幾つかの課題をもうけ、自薦でメンバーを募ってグループを作る。グループごとにマルチプル方式でALセッションを定期的に開催する。

■実施目的
 スキルアップ研修は主として、テクニカルスキルの習得が目的の場合が多い。ビジネスコーチングでは状況対応能力やヒューマンスキルの習得、アクションラーニングは状況対応能力やヒューマンスキルに加えてチャレンジ能力やチームとして協同といったことが目的とされているように感じる。
■学習のやり易さ
 スキルアップ研修は、職場から離れなければならないのに対して、ビジネスコーチング、アクションラーニングとも職場内でできる。
また、上司がかける時間はコーチングが一人ひとり行うのに対して、アクションラーニングは一度に行うことができるので、アクションラーニングの方が上司の立場からはよりやり易いといえる。
■学習の深さ
 スキルアップ研修では受講者は受身の立場であり、課題も実践と離れた内容となるためリフレクションは起こりにくい。
ビジネスコーチングでは、現実の問題での個人の気づきが生まれる。
アクションラーニングは個人の気づきに加えて、チームとしてダブルループ/トリプルループ/チームの協調性などより深い学習が行われる。
■学習の広がり
スキルアップ研修やビジネスコーチングでは、学習効果は個人止まりである。
アクションラーニングの結果は、職場内でのグループとしての次の行動につながり、この連鎖によって組織全体の改革が促進される。

 ホンダ出身の人材育成コンサルタントの光富氏は、ホンダではOJTやOff- JTを行っているが、本当に人を育てたのはOJTやOff-JTではなくOCT(On the Chance Training)であると述べておられるのを読んだことがあります。 人材育成という面に限っていうとアクションラーニングはOJTでもOff-JTでもなく、OCTに近いものではないでしょうか。

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2005.10.12

変革を成功に導くダイヤローグ(対話)

今日は、東京神田である商社様の引き合い打ち合わせにきたあと、JQAA大学(日本経営品質協議会セルフアセッサー研修)の月例研究会に参加させていただいた。
今月のテーマは「ダイヤローグを成功に導く」、講師はスマートワーク社代表の千田彰氏です。
千田氏は、リクルート社役員を経て、2001年にこの会社を立ち上げられたとのこと。

セミナー内容は、ファシリテータ手法のひとつで、米国バイカル・スマート社で開発され、これまで米国ビジネス界で広くも用いられてきた。

米国での調査では、シックスシグマなどの改革プロジェクトを社内に導入するが、その成功率は25%しかない。
成功する企業と、失敗する企業の差がどこにあるか調査したところ、どの会社にも当てはまるある共通の事柄が見つけられた。
成功する企業には上司・部下の間で「気楽にきまじめな話ができる」という風土がある。
人間は、何か新しいことをやろうとすると抵抗する。成功する会社では、その抵抗に対して上手に対応する風土(コミュニケーションスキル)があるが、失敗する会社にはその風土がない、という点だ。その調査研究結果にもとづき、そのコミュニケーションスキルを体系化してプログラム化したものが今回の紹介内容であった。

この研修を聞いて、暫らく前に読んだ香本裕世筆「会社を変える人材開発」に出てくる事例と同じことを言っていると感じた。
 
香本さんとは、7月に同じく東京で開催されたGIALアクションラーニングコースで同じグループセッションを受講した。コース受講中は、香本さんが、それ程有名な方とは知らなかったが、帰ってから氏の著書を購入し読んでびっくりした。

このブログの後段で、スマートワーク社の研修の骨子を紹介しますが、骨子だけでは中身は余り良くわからないと思います。 実戦編として香本さんの著書の事例を読んでいただくとよく理解できると思います。

  ⇒ 香本裕世筆「会社を変える」人材開発

以下に、ダイヤローグ(対話)を成功に導く手法のポイントを紹介します。
しかし、このスキルは理論だけ理解してもやれない。ひとつずつ何回も何回も繰り返し練習していくうちに習得できるそうです。

●人間は変化に対して抵抗する動物である。
  その根本は、変化によって自分の現在の利益が損なわれるのではないかという恐れに起因する。
 
●恐れを取り除き「前向きの選択」に導く必要がある。
  そのダイヤローグ(対話)に、お互いの考え(IQ)と気持ち(EQ)を注ぐこと。

●緊迫した会話の場面では、我々の感情は猿並みになる。
  理性ではなく感情が前面にでる。そして、とんでもない方向へ話が展開する。
   
●それを避けるのは、立ち止まって問いかけること。
  ・自分のために欲しいこと
  ・相手のために欲しいこと
  ・お互いの関係に大切なこと
  そして、それらの本当に欲しいものに対する行動を選択すること。

緊迫した場面に対応するスキル

スキル1 状況をみる
      感情的な手がかり、態度、身体的な手がかり

スキル2 相手を安心させる    
   
  ・共通の目的を見つける
  ・相互の尊敬・・・相手の話を最後まで聞く

安心させる3つのスキル
(1)明らかな問題に対して謝る
   肯定部分・・自分の動機に関して意図していない侮辱や誤解を明確にする
   否定部分・・相手への敬意と本当の動機を明確にする

    ここで対話演習

(2)CIRBで共通の目的を見つけ出す
    Commit    決意
    Recognize   理解
    Invent    目的を作り出す
    Brainstorm  ブレーンストーミング
   共通の目的に到達する方法
   ・双方の目的が両立可能であることに気づく
   ・高次元、または長期的な観点から共通の目的を作り出す 

    ここで対話演習

(3)「行動へのプロセス」を共有する
  ① 事実を確認する
  ② 自分のストーリーを話す
  ③ 相手の行動へのプロセスを尋ねる
  ④ 仮説を話す
  ⑤ チャレンジを奨める

    ここで対話演習

上記内容について スマートワーク社のホームページ にコースの詳細が載っていますので、興味のある方はアクセスしてみてください。


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2004.10.06

褒めることが人を輝かせる

日経ビジネスのメールマガジンを表題をながめていたら酒井光雄氏の「褒めることが人を輝かせる」という記事の紹介が目にとまった。開けてみると、ザ・リッツ・カールトンホテルの顧客からの「称賛の手紙」の食堂への掲示や、助けてもらった人に感謝の気持ちを伝える「ファーストクラス」システムの例で、褒めることが如何に相手のやる気を引き出すかを解説している。
確かにそうだ。自分の友達を見ていても、仲のよい夫婦は褒めることがうまい人が多い。
 そんなことは解っている、という人は多いだろう。しかし、頭では解っていても、実際には、行動が伴わない。
自分も、仕事の面では、意識して使っているが、家庭では余り気を使わない。それでは、ダメなんですね。日ごろから常に使って、褒める言葉の数を増やさなければ!
この記事の詳細は私の業務ホームページデータベース6-09 に掲載されています。

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2004.05.23

エンパワーメントの矛盾と幻想

 日本経営品質協議会のアセスメント基準書によると、エンパワーメントとは「組織の戦略目標が社員に理解された上で、現場に大きな権限が委譲された状態を指します。激しい経営環境の変化に対し迅速で柔軟な経営を実現するため、現場が主体的かつ迅速な意思決定を促すしくみです。社員の自立によるやる気を通じて、組織の生産性向上に結びつく側面を持つとともに社員の無力感を取り除き、モチベーションを高める効果があります」とある。
実際、経営品質の向上を目指す企業は勿論のこと、ISO9000:2000年版でも、表現は明確でないが、要求事項の随所にその考え方が入っており、最近の日本における経営の1つのトレンドとなっている。
ところが、自分が、コンサルティングで色々の企業様にお伺いしていると、経営者の方々は「うちの社員には、もっと自主的に提案し行動するようになってほしい」といったエンパワーメントを求めるお話をされるが、実際の決定権限は、認めておらず、本心はそうなってほしくないのではないかと思われることに出くわす。
これは、日本に限らずその源流であるアメリカでも同じことらしい。
 最近読んだハーバード・ビジネス・レビュー・ブック「エンパワーメントの幻想と現実」(クリス・アージリス筆)の中に、エンパワーメントに対する経営者側と従業員側の複雑な心理が紹介されている。
エンパワーメントに対する極端な例として、東ドイツに逸話がある。
ーーーーーここから引用ーーーーー
外因的コミットメント(トップダウンの指示にもとづいて仕事を進めるという意味)というのは、多くの従業員の場合、生き残りのための心理的よりどころ、すなわち組織に適応し、身を守っていくための行動一形式となっている。彼らは、これを処世術とすることによって、たいがいの環境で生き延びていけることになる。
その実態は、旧東ドイツで現在起こっている”ドラマ”で証明できる。ベルリンの壁が崩壊すると共に、東ドイツの労働者のそれまでの働き方がガラリと変わることになった。人部分の労働者はそれまで、上層部からの指示に従うことによって自らの人生を全うすることができると信じていた、つまり、東ドイツの工場はそれまでの40年間、ほとんど例外なく中央からの指令を受け、その指示に従って生産活動を維持していた。もし労働者のだれかが、自らの"運命"を自らの手で切り開くために、そのために必要な権限を与えてほしいと言い出したりすれば、彼は自分の生命をすら危うくしたことだろう。その結果、東ドイツの労働者たちは、自分たちに求められる仕事のうち最低レベルのものを成し遂げれば任務は完了という"労働倫理"を打ち立てたのである。
共産主義政権が消滅した後、私は旧西ドイツの経営トップたちと何度かディスカッションの機会を持ったが、彼らは口々に旧東ドイツ労働者の覇気のなさ、取り組み意欲の乏しさを訴え、驚きと困惑の声を上げた。そして、外因的コミットメントに浸り切り、そのルールに従って何十年も生きてきた人々が、内因的コミットメント(自分自身で仕事のやり方を創造し決定実施すると言う意味)と正面から向き合い、これを新たなルールとして受け入れるというのは、彼らにとって肝をつぶすような、あるいは恐怖の出来事であるようだと言い、そうした事態は、自分たちの理解を絶するものだと嘆いた。
ーーーーーここから引用ーーーーー
 これは、東ドイツだけでなく日本においてもワンマン社長に率いる殆どの中小企業が同様の状況ではないかと思われる。
そのような会社では、早急にエンパワーメントを進めることは失敗につながる。トップダウンによる業務管理の中に、エンパワーメントを織り込んでいくというのが現実的である。そして、時間をかけてゆっくりとエンパワーメントを拡大するというプロセスをとらなければならない。
 結局のところ、エンパワーメントというのは、経営の理想であって完全なエンパワーメントはありえない。そしてトップダウンによる業務管理を行うか、社員のエンパワーメントによる業務管理は、業態やこれまでの組織文化によって違ってくることになると思う。

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