プロセスアプローチとは
私が運営している西村経営支援事務所のホームページの中に「適合性と有効性を同時に監査するプロセスアプローチ型監査のすすめ」というページがあります。
ISOのマネジメントシステムの用語を使用しており、用語の知識がないと分かりにくいと思いますので、その予備知識を5回に渡って解説しています。
第2回目は「プロセスアプローチ」について解説します。
プロセスアプローチ
ISO9000:2015規格 2.3.4項では、プロセスアプロ―チを以下のように定義しています。
説明
活動を首尾一貫したシステムとして機能する相互に関連するプロセスであると理解し、マネジメントすることによって、矛盾のない予測可能な結果が、より効果的かつ効率的に達成できる。
取り得る行動
-システムの目標、及びそれらを達成するために必要なプロセスを定める。
-プロセスをマネジメントするための権限、責任及び説明責任を確立する。
-組織の実現能力を理解し、実行前に資源の制約を明確にする。
-プロセスの相互関係を明確にし、システム全体で個々のプロセスへの変更の影響を分析する。
-組織の品質目標を効果的及び効率的に達成するために、プロセス及びその相互関係をシステムとしてマネジメントする。
-プロセスを運用し、改善するとともに、システム全体のパフォーマンスを監視し、分析し、評価するために必要な情報が利用できる状態であることを確実にする。
-プロセスのアウトプット及び品質マネジメントシステム(以降QMSと記載)の全体的な成果に影響を与え得るリスクを管理する。
分かりやすい説明
前回のブログで、プロセスには階層があること。活動レベルのプロセスは、一般的にプロセスの目標、インプット、アウトプット、基準及び手順、人的資源、物的資源、監視・測定、改善で構成されていることを説明しました。
プロセスアプローチは、組織の品質目標を効果的及び効率的に達成するために、それらのプロセス及び相互作用を運用し、監視し、分析し、改善すること。また、個々のプロセスの活動の状況をシステム全体として監視し、評価し、改善することによってQMS全体のパフォーマンスを向上されるように取り掛かる(アプロ―チする)ことを指しています。
これをご家庭の「卵焼きプロセス」で説明します。
図-1は、卵焼きのプロセス活動図です。
図-1 卵焼きプロセスの活動図
この図で、プロセスの目標は「ふんわり美味しい卵焼きを食べたい」ということ。インプットは生卵、サラダ油、調味料です。アウトプットは出来上がった卵焼き、人的資源はお母さん、物的資源は卵焼き器とガスコンロです。
美味しい卵焼きを作るには幾つかの条件がある。
一つ目は、材料(生卵、下に敷く油、調味料)がよいということ。材料が悪くては美味しい卵焼きは作れません。
二つ目は、資源が適切であるということ。お母さんの調理の力量やガスコンロが正常に作動しなくてはなりません。
三つ目は、正しい焼き方が決まっていること。ここではガスコンロの火力の調整や、時間、焼き加減などの条件が設定され決まっていなければなりません。
四つ目は、正しいアウトプット。焼きあがった卵焼きの食感、香り、歯ざわりといった基準があてそれを満たしていること。
これがプロセスの基本的な条件です。
プロセスを運用し、監視し、分析し、改善していくとは、このような条件の元で手順を設定し、先ず卵を焼いてみる。焼きあがった卵焼きを確認(検査)する。焼き上がった卵焼きを試食して食感、香り、歯ざわりなどを確認する。確認の結果、問題があるとすると設定したプロセスのどこに問題があったかを確認し改善する。これを繰り返して行くうちに効率的にふんわり美味しい卵焼きを造れるようになります。
先ず初回の段取りをして卵焼きを造ってみます。造るときに①材料が条件どおり揃っているか、②焼き方や、ガスコンロに問題がないか、③火加減の調整は良いか、④出来上がったものの形や焦げ具合はよいか、を確認します。これをISO9001では、監視・測定と言います。
次に、出来上がった卵焼きを試食し、食感、香り、歯ざわりを確認し、どこかに問題がないか確認します。これをISO9001では、分析及び評価といいます。
そして、問題があればその原因が材料にあるか、焼き方にあるか、なぜそうなったかを調べ改善します。即ち、是正処置です。
この手順を繰り返す。
また、毎日焼く場合、プロセスの運営管理がうまく行っているかどうかを確認する指標”プロセスの有効性指標”を設定する。この場合は、焼きあがった卵焼きの失敗発生率でしょうね。”パン焼き工程の失敗の発生率を下げていく”ことを、”プロセスの有効性を改善する”といいます。
プロセスアプローチを卵焼きプロセスの例で説明しましたが、皆さん携わっているどのようなプロセス(作業)でも基本は同じです。
以上の説明は、単一プロセスの活動レベルの運用の例を説明です。プロセスアプローチには個々のプロセスの活動の状況をシステム全体として監視し、評価し、改善することによってQMS全体のパフォーマンスを向上されるように取り掛かること含まれています。
図-2 会社全体のプロセスの流れと相互作用
上の図、図-2は会社全体のプロセスの流れを書いたものです。図-3はその中のコアプロセスの流れを描いたものです
図-2では、会社全体として、マネジメントのプロセスと事業の運用プロセスがあります。上の図はマネジメントのプロセスで、下の図は事業の運用プロセスです。
マネジメントのプロセスでは、運営組織の状況把握のプロセス、システム管理プロセス、方針・目標管理プロセス、パフォーマンス評価プロセス、改善プロセスがあり、会社のシステム全体として監視し、評価し、改善することによってQMS全体のパフォーマンスを向上されるように取り掛かかっています。
上の図の黄色の枠内は相互作用の内容を標記しています。相互作用とは、プロセスがお互いに影響を与え合い成果をあげていく過程を指しています。相互作用の具体的な説明は、次のブログ「システム思考/システムアプロ―チ」で説明します。
図-3 事業の運用プロセスのプロセスマップのコアプロセスの詳細
上の図、図-3は事業の運用プロセスのコアプロセスの流れを抜き出したものです。
ここでは一つのプロセスのアウトプットが次のプロセスのインプットとなっている。
例えば営業のアウトプトである受注書・請負契約書が次のプロセス(設計や製造)のインプットとなる。
プロセスの組み合わせ・流れ、プロセスの運営責任者、情報の受け渡し方法(プロセス間のコミュニケーション)が確立されていないとか会社全体がうまく機能しません。これは、コアプロセス内の相互作用の例です。
以上、3つの段階でのアプローチを説明しましたが、これらのアプローチを合わせて”プロセスアプローチ”といいます。
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