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2024.04.15

システム思考/システムアプローチ

  私が運営している西村経営支援事務所のホームページの中に「適合性と有効性を同時に監査するプロセスアプローチ型監査のすすめ」というページがあります。

ISOのマネジメントシステムの用語を使用しており、用語の知識がないと分かりにくいと思いますので、その予備知識を数回に渡って解説しています。

3回目は「システム思考/システムアプローチ」について解説します。

 

ISO9000:2015年版における

   システムアプローチの扱い

 ISO9000:2008版では、品質マネジメントの原則が8つあった。ISO9001:2015規格書付属の解説書によると、ISO9000:2015年はでは、その中のプロセスアプローチとシステムアプローチの両方の原則を融合し、活動要素の合理的管理による全体最適を図るという原則にまとめられた。原則の表現について、システムアプローチとするか、プロセスアプローチとするか議論されたが、規格ユーザーの理解のしやすさを考慮して“プロセスアプローチ”とすることで落ち着いたとのことである。

規格の中では、システムアプローチという言葉は、出てこなくなったが要求事項の中には、システムアプローチから出たと思われる項目が幾つかある。

 

システムアプローチ ISO9000:2008年版の定義

「相互の関連するプロセスを1つのシステムとして、明確にし、理解し、運営管理することが、組織の目標を効果的で効率よく達成することに寄与する」

確かに、プロセスアプローチの定義とあまり違わないようです。しかし、趣旨は少し違っています。

 

システム思考とシステムアプローチ

  システム思考の歴史は古く、1956年にジェイ・フォレスター氏が発案した「システムダイナミクス」がベースになっています。その後、1990年にシステム科学者のピーター・センゲ氏が著書『最強組織の法則』で提唱した方法論が、教育や企業のマネジメントで活用されるようになっています。システムアプローチはシステム思考を組織管理に活用したものでISO9001では2000年版から導入されています。

システム思考

 システム思考は、物事の全体像を「システム」として捉え、その問題が発生している要素を多角的な視点で分析し、解決に向かう方法論で、アプローチのことです。

目に見えている問題だけに捉われるのではなく、問題が発生するのには多種多様な要因が複雑に絡み合っていると考え、その中で最も深刻な影響を与えている要因を見極めます。

システム思考では、システムの複雑性を見える化して様々な要素がどのように作用しあっているかを明瞭化するために、ループ図、システム原型、時系列変化パターンのようなツールを用いることがあります。

詳細は、大学院大学至善館の小田理一郎先生や枝廣淳子先生が運営する下記のページで分かりやすく解説されています。

サーチエージェント システム思考

 

システム思考の事例

 株式会社アーティエンス様のホームページに「毎週の定例会議が活性化しない」というテーマで、システム思考を用いて問題解決を図った事例を解説されています。

システム思考とは/「複雑な課題」を解決に導く思考法を事例で解説!

 

システムアプローチ

 システム思考に基づいて問題解決を行う点は同じですが、その組織のプロセスの全体像を理解し、効果的な解決策を見つけるアプローチです。

 

ISO9001へのシステムアプロ―チの適用

(1) 相互作用の理解

 相互作用とは、二つのプロセスが互いに影響を及ぼし合うことを指します。これは、目に見える物理的な影響だけでなく、目に見えない心理的な影響も含みます。

ISO9001:20015 箇条4.4b)では「これらのプロセスの順序及び相互作用を明確にする」ことを要求している。しかし、二つのプロセス間だけを考えていると何のための相互作用か分からなくなる。

この場合、システム思考の観点から品質マネジメントシステムを運用する上での幾つかの課題(問題)を想定し、システム思考で相互作用を考えると分かりやすい。

以下に幾つかの例を紹介します。

なお、図中の P はプロセスの略です。

・顧客の創造の関する相互作用

Audit005
   図-1 顧客の創造(新規顧客又は新規初回発注)のループ 


・顧客満足向上の関する相互作用(既存顧客の場合)

Audit006

    図-2 顧客満足向上(既存顧客)のループ


・リスク及び機会の取組みの相互作用

Audit007_20240416160201
    図-3 リスク及び機会の取組みのループ


・人々のモチベーション向上に関する相互作用

Audit008
    図-4 人々のモチベーション向上のループ 


・意思決定の客観性・信頼性向上に関する相互作用

Audit009
    図-5 意思決定の客観性・信頼性向上のループ

 

(2) 真に効果がある改善の実施

 ISO9001:2015 4.4.1プロセスアプローチに関する要求項目「 g)これらのプロセスを評価し、これらのプロセス意図した結果を確実にするために必要な変更を実施する」とあります。

また、10.2 不適合及び是正処置 において

d)是正処置の有効性をレビューする。

の後

f)必要な場合には、品質マネジメントシステムの変更を行う。

 

同様にISO14001:2015 10.2 不適合及び是正処置 において

d)是正処置の有効性をレビューする。

の後

e)必要な場合には、品質マネジメントシステムの変更を行う。

という箇条が追加になっています。

この件に関してTC176発行の「ISO9001:2015におけるプロセスアプロ―チ」付属書Aの改善の項の手引きに「“システム思考”では、あるプロセスの一つの事象が従属するプロセスに起因するか、又は影響する可能性があるとしている。原因及び影響は同一プロセスにはないかもしれない。」と記載されている。

ISO9001:2015ISO14001:201510.2「不適合及び是正処置」における「必要な場合には、品質マネジメントシステムの変更を行う」は、システム思考の考え方を体現した重要な項目です。システム思考では、組織を単一のシステムとして捉え、各要素が互いにどのように関連し、影響し合っているかを理解することが重要です。

再発防止策は、過去の経験に基づいて策定されるため、必ずしも将来発生する不適合を完全に防ぐことはできません。単に是正処置が完了したことを確認するだけでなく、システム思考に基づいて組織全体のシステムを分析し、潜在的なリスクや問題を洗い出すことが重要です。そして、必要に応じてシステムを改変することで、より効果的な是正処置を実現し、再発防止につなげることができます。

 

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