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2015.08.16

ISO9001:2015年版での品質マニュアルについて

 2015年9月にISO9001品質マネジメントシステム、ISO14001 環境マネジメントシステムが同時改定される。邦訳版JIS Q9001:2015及びJIS Q14001:2015は12月に発行の予定です。今回の改定はかなり大きな改定になり認証取得済の組織は、移行審査を受け、2018年8月までに移行を完了させねばならない。

ISO9001 :2015年版では品質マニュアル作成の要求事項が削除されました。では、本当に品質マニュアルは不要なのであろうか。

品質マニュアルは必要か

 ISO9001:2008年版以前の品質マニュアルは規格の条項順に記載された品質マニュアルが多い。これを仮に従来型の品質マニュアルと呼ぶことにする。
ISO9001:2015年版では、品質マニュアルを要求していない。どうして品質マニュアル作成の要求事項が削除されたかを考察してみると、以下の点が浮かび上がって来る。
 1つ目は、会社の業務は受注から設計・調達・製造・引き渡しに至る事業プロセスに従って行われており、ISOの規格条項順に行われている訳ではない。従来型の規格条項順の記載されたマニュアルでは、これらの事業活動との乖離が発生し、ISOマネジメントシステムへの社員のエンパワーメント(自律性を促すこと)が難しい。
 2つ目は、ISI9001:2008年版では、プロセスアプローチを計画することが推奨されていた。ISO9001:2015年版では、現行の品質マネジメントの原則の1つであるシステムアプローチが、プロセスアプローチに包含され、プロセスアプローチを計画するだけではなく、実施し管理することまで要求している。規格条項順に記載されたマニュアルでは、プロセスの計画、実施、管理が的確に表現されず二重管理となりやすい。
従来型の品質マニュアルは、認証機関の審査員にとって規格要求事項との対比が容易で重宝なものであるが、前記の観点から見ると、そのメリットよりもデメリットの方が大きい。
それでは、品質マニュアルは不要かというと、以下の点から、やはりあった方が望ましい。1つ目はISO9001:2015 年版では品質マニュアルは要求されていないが、品質マネジメントシステムの有効性のために必要な文書化された情報が要求されている(ISO/FDIS 9001:2015 7.5.1項参照)。
これには以下のものが該当すると考えられる。
① 組織の目的、方針、目標及び、これらを達成する手段
② マネジメントシステムがどのように設計されているかを示す手段
③ プロセスアプローチ、特にプロセス間の相互作用を示す手段
④ 重要プロセスのグッドプラクティス
⑤ 社員へのこれらの手段を伝達するツールとして

 3つ目は認証機関の審査員に対して、規格の要求事項がどのプロセスに割り振られているかを示すことが必要である。審査員に役に立つ指摘を期待するのであれば、規格の要求事項がマネジメントシステムのどのプロセスに適用されているかを、品質マニュアルで事前に示すことが有効である。
 4つ目は、2012年以降に制定又は改定されるマネジメントシステム規格からISOマネジメントシステム規格開発業務指針の附属書SLが適用され、規格書の章構成や用語の定義が統一されたことである。どの規格においても附属書SLに従って方針、目標及びその達成手段が要求されている。ISOのマネジメントシステム規格は、2000年にはISO9001とISO14001の2つであったが、2015年中には15のマネジメントシステム規格ができる見込みであると聞いており、マネジメントシステムの統合の機会が増えてくる。その時にシステムのベースとなるものがISO9001 であり、品質マニュアルが該当する規格との統合のフレームワークとして役立つ。

品質マニュアルを書き直す必要があるか

 あなたの会社の品質マニュアルが前記の要件を満たしているのであれば、書き直す必要はありません。新規格では、品質マネジメントシステムの有効性のために必要である文書化された情報を要求しているが、品質マニュアルを要求してはいないので、品質マニュアルの章立てはどのようになっていてもよい。現行の品質マニュルにISO9001 :2015年版で追加された要求事項に関するプロセスを書き加えるか、別文書で維持すれば良いと思います。
しかし、新規格のねらいは、2008年版より大きく変わっています。また、2008年版の時点では、組織の競争優位の観点からの品質マニュルの記載がなかったのではないかと思います。新規格へのアップグレードの際に、附属書SLの戦略的アプローチを活用して、競争優位の観点から組織の目的を明確にし、その目的を達成するための品質マニュアルに作り変えることは有効であると思います

 4月に、以上の具体的事例を交えた移行のポイントについて、群馬ISO機構 管理者フォーラムで講演するよう依頼があり、僭越ながら講演をさせいただきました。
その後、6月中旬マネジメントシステムの専門誌である月刊アイソス社より、その内容を6回の連載記事にしてほしいとの依頼があり引き受けました。

私は、8月21日より12月6日まで地球一周の旅に出かけることになっているので、1回毎に書くことはできないので、6回分をまとめて執筆しました。

アイソス社より8月お盆前に6回分のゲラ刷りをいただきました。アイソス誌の発刊前に公開することはできませんが、興味のある方は是非アイソス誌を買って読んで見てください。

⇒ マネジメントシステムの専門誌「アイソス」

Isos

構成は以下のようになっています。
2015年10 月号
 第1回 競争優位のマネジメントシステムを構築する
2015年11月号
 第2回 統合マニュアル作成―目次、組織の状況の理解
2015年12月号
 第3回 統合マニュアル作成―リーダーシップ、リスク及び機会への取組み
2016年1月号
 第4回 統合マニュアル作成―目標及び実施計画作成
2016年2月号
 第5回 統合マニュアル作成―事業プロセス(支援プロセス)
2016年3月号
 第6回 統合マニュアル作成―パフォーマンス評価、改善


<2016年1月12日追記>
 アイソス発刊済の号に投稿した内容については、下記に公開しました。

⇒ ISO9001(2015年版)改正のポイントと統合マニュアル改定文例

⇒ ISO9001:2015版移行内部監査チェックリストサンプル集

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