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2013.08.14

生物多様性って何だ!

 地球環境問題で「気候変動」や「資源の消費」というのはよく分かる。しかし「生物多様性」というのは、今ひとつい腑に落ちない。
生物多様性には、生態系の多様性、遺伝子の多様性、種の多様性がある。「種の多様性」は「生態系の多様性」と「遺伝子の多様性」の結果であって、種が減少しているという現実は、生態系が破壊されたか、遺伝子の多様性が喪失した結果である。
「生態系の破壊」は、水、食料、木材等の恵みが減少するという形で我々の生存環境に影響を及ぼす。「遺伝子の多様性の喪失」は、医薬品開発やバイオプロセスによる技術開発の機会損失という形で我々の生存環境に影響を及ぼす。
これは人間が自然から受ける便益(恵み)が少なくなることを説明しているものであるが「気候変動」や「資源の消費」より重要度ランクが低いように感じる。
「生物多様性の喪失」が重大問題であるという本当の理由はなんであろうか。

 生物多様性の原点は、1982年に国連総会で採択された以下の世界自然憲章にあるのではなかろうか。
「人間は自然の一部であり、その生活はエネルギー及び栄養物の供給を保証する自然系の本来の機能に依存している。すべての生命形態は固有のものであり、人間にとって価値があるか否かに関わらず尊重されるべきものであること、及びそのことをそれらの生物にあてはめるために人間は自己規制しなければならない」

このことを目で見て分かるようの表現したものが、エコロジカル・フットプリントである。
 
Eco01

エコロジカル・フットプリントの推移が生物多様性の喪失を、そのまま現すものではないけれども、地球規模で人間の活動が、自然が持つ本来の機能の範囲を超えていることを如実に現している。
生物多様性を大切にするということは、「我々人間が科学を持って地球を支配する」という傲慢な考えを改め、「自然の浄化の範囲で経済活動を行わねばならない」という考え方を広めるという点で重要である。

「生物多様性国家戦略2012-2020」によると、生態系から我々の暮らしに与えられるサービスを「生態系サービス」と呼び、次の4つがある。
1 基礎サービス
 栄養豊かな土壌の形成、海の生きものへの栄養塩の供給、二酸化炭素の吸収と酸素の供給
2 供給サービス
 食料や水、木材、繊維、医薬品等の供給
3 文化的サービス
 自然による心の癒やし、景観美
4 調整サービス
 水質浄化や自然災害の軽減、天敵の存在による病害虫の抑制

生態系の恵みの中で「2 供給サービス」が喪失した場合は、我々の日常生活にコスト高となって跳ね返って来るので理解しやすいが、「1 基礎サービス」「3 文化的サービス」「4 調整サービス」は、目にみえないので、生態系の大切さに気が付かないのだろう。

 ところで、私はエコアクション21の審査人をしている。
エコアクション21では、要求事項とはなっていないが、推奨事項として「生物多様性の保全を持続可能な利用のため、具体的な取組に務める」という項目がある。
事業者より「具体的に何をすれば良いのですか」という質問を受けるだが、私自身よくわかっていないので、うまく答えられない。
そこで「生物多様性国家戦略」をもとに私なりに考え方をまとめてみた。

生物多様性危機の原因
1 開発などの人間活動による危機
 土地開発、生物種の乱獲等により生態系が破壊される、或いは絶滅する
2 自然に対する働きかけの減少による危機
 都市化、高齢化の進展により里地里山への働きかけが縮小し、里地里山の生態系が破壊される
3 人から持ちこまれたものによる危機
 ①外来生物の持ち込みによる生態系の破壊
 ②農薬等の化学物質の使用による生態系の破壊
4 地球温暖化による危機
 地球平均気温が1.5~2.5℃上昇した場合、動植物種の20~30%が絶滅する
 地球平均気温が4℃以上上昇した場合、動植物種の40%以上が絶滅する

生物多様性保全の考え方
 ランドスケープ(景観)とハビタット(生息地)の地域指定を行い保護する。
国際的にはラムサール条約(水鳥の生息地の保護)、ワシントン条約(野生動植物の種
の保護)、文化遺産(文化遺産、自然遺産、複合遺産)等がある。
国内的には、自然環境保全地域、自然公園、鳥獣保護区、生息地等保護区、絶滅のおそれのある野生動物種の保全等の制度がある。
なお、2010年10月名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10) では、2020年までに世界の保護区の割合を、少なくとも陸域17%、海域10%拡大するほか、サンゴ礁などを劣化させる人為的な圧力を最小化するなど、20項目からなる「愛知目標」が採択されている。
これらは、主として行政やNPO団体が中心となって活動を行う内容である。

事業者としてどのような取組を行うか
 平成21年に環境省より「生物多様性民間参画ガイドライン」が発行されている。
しかし、このガイドラインは大企業・中堅企業向けであって、中小企業にとっては難しすぎるように感じる。

 中小企業において取り組む場合のポイントを紹介する。
1 基本事項として、商品を購入するとき、生産・施工・販売を行うとき、土地を利用するときは、生態系を破壊していないか確認する(全業種)。
 ①木材、水産品、農産物、鉱物等の原材料を調達する時は、原材料の生産者が生態系を破壊していないか確認する。
できれば環境配慮の認証を得たものを使用する-FSC認証(木材・紙)、MSC認証(水産物)、エコ農産物(各県の認定制度)
 ②大気、土地、水系へ化学物質を流出させない(製造業)
 ③農薬、殺虫剤、除草剤の使用をなるべく控える(農業、造園業)
 ④貴重種の生息地で作業を行うときは生態系に配慮する(例えば騒音)
 ⑤土地を利用するときは環境アセスメント等により生態系を破壊しないか確認する
2 社会的貢献活動と合わせて、地域の河川等の清掃や里山保全の活動に参画する
3 エコツーリズムを企画し、自然環境の保全、環境教育等の場を提供する(旅行業、観光業)

民間参画ガイドラインに小規模事業者が生物多様性を本業に活かした例が載っていました。
省エネ・創エネ・廃棄物のリサイクル等の環境配慮を本業とする会社は多数ありますが、生物多様性も工夫次第で本業となります。
・コーヒーの栽培・指導、輸入、販売業(従業員数5名)
 コーヒーの価格は国際相場により大きく変動し、そのような変動が生産者の生活に影響を与える。
I社の創業者は、長年コーヒー産地で活動しコーヒー生産者や生産現場の環境に精通していた。コーヒーは日陰でも育つ数少ない農産物であり、森林等の樹木の下でも生産し収穫できるという性質を有していることに着目し、持続可能なコーヒー栽培を通じて、良質で安全なコーヒーを提供するとともにお、地域の生物多様性や生活住民の質の向上に努めている。

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