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2013.07.28

40年後の気候変動と経済の予測

 ここ数ヶ月、間をおいて40年後の地球環境・政治・経済の予測の本を読んだ。
一冊目は40年前「成長の限界」を出したローマ・クラブの一員である、ノルウエィのビジネススクール教授ヨルゲン・ランダースによる「2052」である。
ランダース教授は、人口、消費、労働生産性、食料生産性、エネルギー使用量、CO2排出量、CO2濃度などの14の指標からコンピュータを併用しながらシステムループを用いて試行錯誤により40年後を予測した。

その予測結果を要約すると以下の内容である。

Fig01
・都市化が進み、出生率が急激に低下するなかで、世界の人口は予想より早く2040年直後にピーク(81億人)となり、その後は減少する。
・経済の成熟、社会不安の高まり、異常気象によるダメージなどから、生産性の伸びも鈍化する。
・人口増加の鈍化と生産性向上の鈍化から、世界のGDPは予想より低い成長となる。それでも2050年には現状の2.2倍になる。
・資源枯渇、汚染、気候変動、生態系の損失、不公平といった問題を解決するために、GDPのより多くの部分を投資に回す必要が生じる。このため世界の消費は、2045年をピークに減少する。

Fig02
資源と気候の問題は、2052年までは壊滅的なものにはならない。しかし21世紀半ば頃には、歯止めの利かない気候変動に人類は大いに苦しむことになる。
・資本主義と民主主義は本来短期志向であり、ゆえに長期的な幸せを築くための合意がなかなか得られず、手遅れになる。
・以上の影響は、米国、米国を除くOECD加盟国(EU、日本、カナダ、その他大半の先進国)、中国・BRISE(ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ、その他新興大国10力国)、残りの地域(所得面で最下層の21億人)で大きく異なる。
・予想外の敗者は現在の経済大国、なかでもアメリカ(次世代で1人当たりの消費が停滞する)。勝者は中国。BRISEはまずまずの発展を見せるが、残りの地域は貧しさから抜け出せない。
 

Fig03
 この本は2012年に執筆されているが、その後2013年5月にハワイのマウナロア観測所で、CO2濃度が観測開始から初めて400PPMの大台を超えたと発表されており、現時点では予測通りである。
 
 
 
 
 もう一冊は英「エコノミスト」誌による「2050年の世界」である。
この本では、人間、環境、信仰、政府、経済、ビジネス、知識、科学の広範囲にわたって予測が行われている。
人口変動の予測については両著書とも大差ないが、地球環境についてエコノミスト誌はCO2濃度の上昇を認めつつも気候変動については「不確定要素が多く現時点では正確に予測することができない」としている。
その理由は
「成長の限界」を含め、今から40年前になされた予測は、悲観的な予測ばかりで、それはことごとく外れている。
なぜ、そうした予測が外れるかと言えば、理由は2つある。
ひとつは、良いニュースは目立たず人々の記憶に残りにくい。悪いニュースだけが残り、相互に関連して認知にバイアスがかかるので、そうした予測が受け入れられてしまう。
もう一つは人間が対策を講ずるということを無視しているからである。

・資源が枯渇する、食料が枯渇するというのは終末予測の典型的なものだが、技術革新による対価格化が起こるということを無視している。
・グローバル化による国際分業により、人々はかってよりはるかに安い値段で必要な物を手に入れるようになった。
・マルサス学説の前提は間違っている。人間一人を養い、住まわせ、燃料を与え、衣料を着せるために必要な土地の量は、人々がより豊かになるに連れ増すのではなく減り続けている。人類は植物の成長を妨げてはいるものの、土壌に肥料をまいたり灌漑を行うことで成長を促進している。バイオテクノロジーの発展によりその応用物は更に低価格化する。
この成長促進の効果が余りにも大きく、人口増加等の人間の活動の影響力を上回っている。
このような結果、先進国は様々な形で森林面積が増えるなど環境は良化している。
従って、今の新興国が先進国並みの経済水準になるまでには、これまで損なわれて自然環境が修復するようになるだろう。

 ヨルゲン・ランダースの「2052」とエコノミスト誌の「2050年の世界」では、両著とも二酸化炭素排出による気候変動への影響は認めているが、エコノミスト誌の予測はかなり楽観的でランダース教授の言うような「歯止めの効かない気候の暴走」には至らないと見ているようである。

その違いは、今後起こる可能性はあるが、まだハッキリとは見えてこないイノベーションの効果を織り込んで入りか、いないかの違いである。
我々は温室効果ガス排出量削減と言うと、再生可能エネルギーの使用拡大や省エネを頭に浮かべるが、もう一つ重要なことがある。
それは、エネルギー、食料生産、製造、販売、情報、医療等について、今までのやり方を創造的に破壊する-イノベーションを起こすということである。
イノベーションは先進国で起き、開発途上国は、そのイノベーションの手法・効果を安く利用し経済を発展させる。その効果は人口が増加することによる環境の悪化を上回る。
ランダース教授の予測は、最悪の場合の予測である。実際にどうなるかは、温室効果ガス排出量削減への地道な努力に加えて、どのようなイノベーションが起きるかによって決まってくる。

 ここで、気になることは、両著とも経済・環境両面に対する日本の評価は非常に低い。
Fig04
これは少子高齢化とともに財政の悪化、国民の既得権益重視・保守化、これに迎合した政治体制に対しての評価である。

急速な高齢化と人口減少は避けられないと思うが、なんとかならないものか。
エコノミスト誌でも指摘していたが、イノベーションは東洋(特に中国・韓国)のような上下関係が強く、国民に自由に物を言わせない政府のもとでは起こりにくい。
日本を再生させるためには、イノベーションの起きる国にしなければならない。それには官僚による省庁縦割りの規制の撤廃、自由闊達な風土づくりが重要ではないかと思います。
また、高齢者は、その人の健康状態にもよるが、我々の次の世代に負担をかけないよう、働ける人は年金だけを当てにしないでボランティアも含めて生涯働く、という気概を持つことも必要と思います。

  2052 ~今後40年のグローバル予測

  2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する

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