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2012.07.25

ISO9001QMS能力実証型審査(監査)

 7月21日(土)日本品質管理学会シンポジュウム「品質マネジメントシステムの監査技法の向上とISO9001の活用」に参加した。
ISO9001、14001に関しては2006年頃ISOの認証を受けた企業から不祥事が多発し、認証審査のやり方に対する疑問や批判が数多く出された。
2008年に経済産業省の指導で認証機関による研究会が出来、2009年にその改善のアクションプランが出された。
その後、2009年のJAB第15回ISO9001公開討論会で「審査を変える~QMS認証の維持向上」をテーマとして「認証登録とは規格要求事項がないということで認証するのものであってはならない。組織にQMS能力がある事を実証するような審査方法に変えること」が提案された。
更に2010年のJAB第16回ISO9001第16回公開討論会では、有効性審査が議題の中心となった。
また、認証機関が受審組織に品質保証能力がある事を証明するには、被審査組織が審査に積極的に参画して、証明する証拠の提示が必要である。具体的には内部監査で確認していることを提示するのが良い方法であるという意見が出されていた。
ここまでの経過は、私のブログ「ISO認証審査の最近の動向」で紹介した。

今回、日本品質管理学会のシンポジウムに参加したのを機会に、その後の経過を以下にまとめてみた。   

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 その後、2010年12月に、ISO9001を認証したということは、認証機関は何を保証することであるかについて、ISO/IAFの共同コミュニケが出された。
⇒ ISO/IAF共同コミュニケ「認定されたISO90001認証に対して期待される成果」

共同コミュニケでは
認証された企業の顧客の視点からは
「定められた認証範囲について、認証を受けた品質マネジメントシステムがある組織は、顧客要求事項及び適用される法令・規観要求事項を満たした製品を一貫して提供し、更に、顧客満足の向上を目指す。」
<ISO9001に対した認定された認証が意味しているもの>
A.製品及びプロセスに適していて、認証範囲に適切な品質マネジメントシステムを確立していること。
B.顧客ニーズ及び期待、並びにその製品に関する適用法令・規格要求事項を分析及び理解すること。
C.製品特性が顧客要求事項及び法令・規制要求事項を満たすために明確にされていることを確実にすること。
D.期待されている成果(適合製品及び高い客満足)を達成するために必要なプロセスを明確にし、運営管理していること。
E.これらのプロセスの運用及び監視を支援するために必要な資源が利用できることを確実にしていること。
F.定められた製品特性を監視及び管理すること。
G.不適合防止を目指すこと、及び、次を実施するための体系的な改善プロセスが置かれていること。
 1.どうしても起こり得る不適合を修正すること。
 2.不適合の原因を分析し、再発を防ぐための是正措置をとること。
 3.顧客からの苦情に対応すること。
H.有効な内部監査及びマネジメントレビューを実施していること。
I.品質マネジメントシステムムの有効性を監視、測定及び継続的に改善していること。
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 2010年のJABの公開討論会の際に、期待される成果を保証する認証審査の具体的な方法論を研究しようという意見が提起されたこともあり、「適合性を確認する審査の研究」というテーマでJABと日本品質管理学会の共同研究が開始された。なお、ここでいう適合性とはISO9001認定の適合性という意味であり、ISO9001の基本要求事項にはQMSの有効性を含んでいるいので、規格条項に対する適合性という意味ではない。
研究の成果は2011年のJAB第17回ISO9001公開討論会「QMS能力実証型審査」で発表された。

その審査手順は
1.有すべきQMS能力を明確にする。
 1)製品を定義する
 2)顧客を定義する
 3)製品要求事項を定義する。
  ①顧客の一般的要求事項・明文化された要求事項
  ②製品要求事項を詳細化する
    どの要求や期待を優先するか
    どんな要求が重視されるか(重要品質特性)
 4)「必要な要求事項」と「注目すべき要求事項」を明確にする
  注目すべき要求事項とは“品質保証できるQMSであるかどうかを決定づけるプロセス、資源、組織”などを指す。
 5)「注目すべきQMS要求事項」を中心に、有効に機能しているかQMS能力像を描く
ここでの到達点は“注目すべき要求事項”の洗い出しであって、審査では「注目すべき要求事項」に焦点を当てて審査を実施する。
 この1)~5)の具体的実施事例として「タクシー会社」「プリンター製造業」の二つの例が紹介されている。
2.組織の個性を理解する
3.審査プログラムを作る
4.認証審査(又は維持審査)の計画を立てる
以上の内容である。

しかし、この提案は実際の認証審査で実証されたものではなく、あくまでも紙の上の提案である。
今回のシンポジウムで、3つの認証機関が、この提案を採用して試行した結果が発表された。
1件目の発表は地方の中核ゼネコンの再認証審査の例である。
審査員は「あるべきQMS像」と「注目すべきQMS要素」の洗い出しのために、事前に企業訪問をしてポイントを整理してから、審査を実施している。
洗い出した「注目すべきQMS要素」をもとに、ISO/IAF共同コミュニケの項目ごとに結果を整理している。
結論として「注目すべきQMS要素」の洗い出しにかなりの労力を要するが、“能力を実証する審査”という意味では有効である。
但し、更新審査の場合は、依頼者のQMSに課題がある場合は、その課題に関するQMS要素を注目すべきQMS要素とした方が良かったのではないか、と言っておられた。

2件目の発表は、従業員数12名の小規模建設工事会社のサーベランスの例である。
この認証機関では、注目すべきQMSと共同コミュニケのマトリックス表を作って審査している。
結論としては、共同コミュニケとの関連が良く分かるということ。また、審査員の力量評価にも使える、と言っておられた。

3件目の発表は、3病棟、123床の病院の再認証審査の例である。
この例では、病院にQMS要素の説明をしたが何のことか理解してもらえず手引きは採用できなかった、とのことであった。
私の以前にある病院のISO90001のコンサルをしたことがあるが、規格の用語で話をしても通じなかった、その業界の用語に翻訳して話をすることが必要である。
そこで、この病院のでは、ここだけは押さえておきたいという個所に適用したが
注目すべきQMS要素⇒共同コミュニケA~Iの証明⇒関連規格条項の審査
という審査のやり方は、今後の審査の「基本」であると結んでおられた。

 しかし、この審査方法は審査員の力量と労力が必要なので、これから、各認証機関の審査が、このような審査の方法に変わっていくかどうかは定かではない。

 ISO/IAF共同コミュニケの内容は、よく見れば ISO9001 4.1一般要求事項とほぼ同じであり、内部監査においても同じことがいえる。
内部監査においても「注目すべきQMS要素」を洗い出し、ISO9001 4.1一般要求事項 又は 共同コミュニケ)と対比して監査するという使い方が出来る。

ここで問題となるのは「注目すべきQMS要素」をどのように洗い出すか、という点である。
この部会のリーダーである平林良人氏は、組織の目標の達成状況の「結果」から判断することを提案しておられた。
001これは内部監査で監査の重点ポイント決めるときにも応用できる有益なアドバイスである。

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