プロセスの有効性指標、KPI、OPIの共通性
9月16日の北陸経営品質フォーラムでは、NIコンサルティング専務 本道純一氏より「見える化経営(可視化経営)」の内容及びそのツールについて紹介頂いた。
詳細については同社のホームページ及びセミナーを受講いただければ、と思います。
以下その概要と、自分が気づいた点です。
最初に経営環境の基本認識として、以下の説明があった。
・これからは人口減少時代に入り、パイが縮小する中で生き残っていかなければならない。
・多量消費の時代が過ぎ、多様化し、どんどん変化する顧客のニーズに対応していかなければならない。
・そのため戦略の地図を描き、実行していかなければならないが、あらかじめ策定された戦略は10%しか成功していないというデータがある。
・戦略・行動を可視化して、まずいと思ったらスピーディに修正処置をとるスピード経営が要求される。
そのために提案されたシステムは、マネージャークラスがそれぞれに経営戦略を立てバランススコアカード(BSC)に落とし込み実施状況をITツールで可視化する。
次の7ステップで実現する。
ステップ1 経営理念・使命を再認識する
ステップ2 20年後の将来ビジョンを描く
ステップ3 ビジョン、戦略、戦術をマップ化する
ステップ4 スコアカードを作成する
ステップ5 アクションプランを決める
ステップ6 モニタリングシステムを作る
スタップ7 経営のコックピットを完成させる
NIコンサルティングの可視化MapScorerの拡大画像を見ていただきたい。
本道氏のこれまでのコンサルティングによると「やっている」と言われた会社でも
・戦略がBSCマップに落とし込まれていても、作っただけで止まっている。
・作られたBSCの戦略・戦術が繋がっていない。
・業務プロセスのKPIが設定されておらず、実行に至っていない。
という状態で、キチンと行われている会社は非常に少ないとのことであった。
1.5時間という短い時間だったので詳細は分かりませんが、話の主旨はよく分かりました。
この話の中で、私が感じたことは業務プロセスの指標の設定についてです。この点に関してシステムが変わっても、同じ経験を何度もしている。ここのところはシステムの成熟度を表している。
可視化経営のKPI(Key Performance Indicator)とは、例えば以下のような内容です。
販売員1人当たりの契約販売数(販売員の生産性を示す)
品切れ率(四半期当たりの品切れ数)
生産サイクルタイム(生産サイクルに必要な時間)
平均故障間隔(平均故障間隔)
これはISO9001では8.2.3プロセスの監視及び測定に相当する。
組織は、品質マネジメントシステムのプロセスを監視、及び適用可能な場合に行う測定には、適切な方法を適用しなければならない。これらの方法は、プロセスが計画どおりの結果を達成する能力があることを実証するもの(demonstrate the ability of the processes to achieve planned results)でなければならない。計画どおりの結果が達成できない場合には、適切に、修正及び是正処置をとらなければならない。
(注記)適切な方法を決定するとき、組織は、製品要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性への影響に応じて、個々のプロセスに対する適切な監視又は測定の方式及び程度を考慮することを推奨する
即ち、この条項におけるプロセスの測定指標とは経営品質におけるKPIに相当し、組織に戦略マップに従って設定されることが効果的です。
環境についても、考え方は同じですが、状況は少し違っている。
ISO14001 4.5.1 監視及び測定
組織は、著しい環境影響を与える運用のかぎ鍵となる特性(the key characteristics of its operations)を定常的に監視及び測定するための手順を確立し、実施し、維持すること。 この手順には、パフォーマンス、適用可能な運用管理、並びに組織の環境目的及び目標との適合を監視するための情報の文書化を含めること。
この条項の「運用のかぎ(鍵)となる特性」とは操業パフォース(OPI)を指し、経営品質のKPIに相当する。
その具体例はISO14031 3.2.2.4 「ECI(環境状態指標)の選択」実践の手引き#4に紹介されている。
ECI(環境状態指標)
・車からの排出物に伴う大気汚染物の濃度(NOx排出量、CO2排出量など)
OPI(操業パフォーマンス指標)
・燃料消費の総量(kl)
・車の燃料効率(km/l)
・車の整備頻度
・代替燃料の使用による車の排出物の削減
・環境対応の制御技術を持つ車の台数
MPI(マネジメントパフォーマンス指標)
・燃料費削減、車の整備及び効率の向上に対する取り組みの効果
ところが、EMSを構築している企業では、ECIを環境目標として設定しているがOPI、MPIを適切に設定している例は少ない。
ISO14001では、OPIを設定することを要求事項で設定しているが、エコアクション21やいしかわ事業者版環境ISOでは、そのような要求事項の記述がないのでOPIが設定されていない例が殆どです。
先のブログ「原因分析における「プロセスの要因」と「外乱」の区別」で説明したように、二酸化炭素排出量、エネルギー使用量のような環境目標だけでは、外乱要因で結果が左右され、取組がうまくいったかどうか評価できない。
多くの企業では、OPIの設定が課題です。
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