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2010.04.03

ISO認証審査の最近の動向

 先月、某中堅認証機関より金沢でコンサルタント向け無料セミナーを開催するという案内をいただきました。内容は認証審査の最近の動向と、その認証機関の戦略、新分野への取組である。
折角なので参加させていただきました。
認証機関の戦略、新分野への取組は認証機関の企業秘密でもあるので紹介できませんが、前段の認証審査の最近の動向と言う点は一般的な話なので紹介します。

 ISO9001の認証件数は2006年をピークに減少傾向にある。中でも全体の40%を占める建設業が30%位減少しており、この減少が全体を10%押し下げている。
また、費用は安いが審査品質が伴わない認証機関の増加、認証取得企業の相次ぐ不祥事でISO認証制度が崩壊の危機に立っている。
このようなことから経済産業省の指導もあって、2009年8月にJABとJIPDECは「マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保に向けたアクションプラン」を作成し公表したが、今年に入って、このアクションプランに従って、以下の基準等があい続いて発行され、これまで見逃されていた認証機関の問題行動が規制されることになりつつある。
・MS認証機関の基本情報公開
・JAB MS501-2010「故意に虚偽説明を行っていた事実が判明した認証組織に対する認証機関による処置」
・JAB MS502-2010「認証範囲及びその表記に関する基本的な考え方」
今後の課題は、JABに加盟しておらず、IAFに加盟した本国の監視からも逃れた小規模認証機関の存在であるということでした。
 また、認証審査の質も問題になっている。2009年12月に「2009年度 JAB環境ISO大会」、2010年3月に「第16回 JAB/ISO 9001公開討論会」が開催されているが、これらの討論会のテーマは認証審査の質に関して、以上の背景に基づいて設定された内容である。
以下、認証審査の質に関して、私自身の解釈を入れて、以前に小職が書いたブログを引用しながら紹介します。

ISO9001品質マネジメントシステム
 「第16回 JAB/ISO 9001公開討論会“ISO 9001認証の社会的意義と責任”」
この内容は、JABのホームページに当日の講演のパワーポイントが公開されている。また、討論の状況はアイソス中尾社長のブログで紹介されている
 ⇒ 第16回 JAB/ISO 9001公開討論会(画面下の質問対象資料)
 ⇒ 中尾優作のブログ(JAB公開討論会)

 今回、ここで指摘されていることは、ISO17021:2007では「認証機関は、審査の結果に基づいて、適合の十分な証拠がある場合には認証の授与を決定し、又は、十分な適合の証拠がない場合には、認証授与しない決定をする」となっているが、これまで認証機関は誤った解釈をしてきた。
不適合がないということは、必ずしも適合していることにならない。適合の証拠を集めなければならない、不適合がなくても適合の証拠が集まらない場合は認証登録できないという判断となる(即ち認証審査における不適合となる)。
このようなことは当たり前のように感じるが、ここで言う適合の証拠とは規格条項の条文(shall)に対する適合のことを言っている訳ではない。
マネジメントシステムの適合の証拠とは、QMSが有効性であることの証拠であり、「ISO9001 1適用範囲の1.1 a) b) を満たすQMSが計画され、実施され、計画した結果が達成できている状態。または、計画し結果が十分でない場合は、改善できるように改善される状態。」を指す。
ここで今回新しく出てきた事柄は「認証とは能力証明であり、審査員と受審企業の共同作業である。認証審査を受ける組織自身が適合していることの証拠を積極的に提出してください。」と言うことに変わる。
どのような証拠を積極的に提出したらよいか、私の下記のブログを、もう一度読んで理解していただくことをお勧めします。
 ⇒ ISO9001:2008年改訂のポイント
 ⇒ 「有効性監査」ができる内部監査員を養成する

 以上のようなことで形式的にISO9001に取組んでいる企業を振り落とす。言い換えると、このことによって企業の基礎的な力を向上させることを狙っている。だからと言ってISO9001は万能ではない。
JAB公開討論会 飯塚先生の基調講演に対して
「登録件数が増加していない。ISO9001は使い方次第で企業に本当に役立つことをもっとPRしてほしい。現在のような登録件数の下降傾向では日本の産業競争力は高まらないのではないか」と言う質問対して、飯塚先生は以下のように答えている。

 『2000年版発行以降、ISO 9000の有効活用については綿々と議論をし、発表したり、書いたりしてきたが、まだ力が足りなかったのだろう。ただ、ISO 9001は買い手のための規格なので、組織がやはり自分でどう使うかということを考えないと競争力はつかない。ただ、基礎力をつけるという意味では役立つかもしれない。また私は、認証数だけを気にするよりも、必要な数に達しているかという観点でみている。
産業競争力という点では、ISO 9001よりも、TQMという日本にはもっとすばらしいものがある。そっちのほうをやったほうが圧倒的に日本の産業競争力は上がると思う。』

Tqm
 TQMの全体像 飯塚先生 1998年 品質管理学会誌,Vol1,「TQM宣言」より

ISO14001環境マネジメントシステム
 一方、2009年12月に開催された「2009年度 JAB環境ISO大会」の方では、環境ISOを有効に活用するにあたって「活動を形骸化させない仕組みやEMSの成果を確認できる仕組みを構築することが有効活用の鍵である」との認識から、“環境ISOの活動の見える化”がテーマとなった。

見える化(情報開示)の対象は利害関係者(投資家・金融機関・取引先・消費者・地域住民など)と組織内部の両方です。
(1)利害関係者に対して見える化
見える化 する項目は
・環境パフォーマンス
 環境パフォーマンス具体的内容は、私のブログ“ISO14001規格の問題点”を参照ください。
・環境法令の遵守の状況
・外注管理・予防処置
 外注管理がなぜ重要かという理由は、自分の職場で環境配慮ができていても、サプライチェーン全体で見ると環境配慮になっていない場合がある。例えば、自社のゼロエミッションを達成するために納入者に包装材を持ち帰らせたといしても前工程は改善されないので全体としては環境配慮になっていない。
・環境報告書
・環境配慮製品の製造(カーボンフットプリント)
 環境配慮製品の見える化の例については、私のブログ“カーボンフットプリント表示制度”を参照ください。なお、ISOでは、2011年までに“ウォーターフットプリント”の規格を制定する予定で、そのうちにこちらの方のフットプリント表示も始まる成行きです。

以上の内容を総括的に見ると、組織内環境改善“紙・ゴミ・電気”を卒業して、“本来業務の環境側面”を特定し、本業による環境貢献を表明することを示唆している。

(2)組織内部に対する見える化
 組織内部に対する見える化のツールは、内部監査の積極的活用である。また、内部監査員を増員してローテーション化し、お互いに改善点を指摘し合うのもよい方法です。
環境ISOの内部監査については、私の下のブログを参照ください。
 ⇒ 環境ISOの有効性の内部監査

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コメント

JAB公開討論会 飯塚先生の基調講演に対して
当日の私の質問を取り上げていただき大変うれしく思います。しかし、私の主張の前半部分を削除されているのは残念です。即ち私の強調したかったことは≪信頼性確保とか有効性審査とかいって、認定機関や認証機関を責めても何になるか≫ということです。≪どんな制度や仕組みにも弱点や難点があるものであり、勿論それをカバーすることは必要ですが、それ以上にその本当の良さ・潜在的な効果を含めて真の価値をもっとPRして、ISOの普及を図って欲しい≫ということです。私は単なる件数ではなく、中小企業への普及率を上げて欲しいと願っています。

投稿: 亀岡 孝三郎 | 2010.05.05 02:21

亀岡先生
 このページに立ち寄っていただいてありがとうございます。先生の質問の主旨を十分に記載していないことをお詫びいたします。

投稿: がまがえる | 2010.05.05 18:58

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