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2009.12.12

ISO14001規格の問題点

 環境マネジメントシステムとは、一般的に環境パフォーマンスの継続的な向上を目指すものと思われる。しかし、EMASやEA21は、特定の環境パフォーマンス基準に言及しているが、ISO14001では、環境パフォーマンスの向上を要求事項としていない。
小職の経験では、国内大手の認証機関の判定でも、環境パフォーマンスの向上は組織の自主性に任され過ぎていて、極端な場合、環境リスクの管理がキチンとできていれば、環境パフォーマンス向上の取組がほんの僅かあればISO14001規格に適合と判断される例を時々みかける。
果たして、それでよいのであろうか、常々疑問を抱いていた。
以下、EMAS、ISO14001、EA21の目的・適用範囲を比較し問題点を考えてみる。

EMAS規則(EUの環境管理・監査スキーム規則)
第1条 環境管理と監査要綱及びその目的
2.この要綱の目的は、以下の事項を実施することによって、組織の環境上のパフォーマンスを継続的に向上させることにある。
(a) サイトを考慮に入れて、組織が環境方針、環境計画及び環境管理システムを確立し、実行すること。
(b) 前項の各事項の実施状況について、組織的、客観的かつ定期的な評価を実施すること。
(c) 環境上のパフォーマンスについてのデータを一般に公開すること

ISO14001:2004 1.適用範囲
 この規格は、組織が法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項並びに著しい環境側面についての情報を考慮に入れた方針及び目標を設定し、実施することができるように、環境マネジメントシステムの要求事項を特定する。
この規格は、組織が管理できるもの及び組織が影響を及ぼすことができるものとして組織が特定する環境側面に適用する。この規格自体は、特定の環境パフォーマンス基準には言及しない。

 以上のように、ISO14001では「環境パフォーマンスの継続的改善」「環境報告(情報公開)」を要求事項としていない。
しかし、ISO14001付属書A.1 一般要求事項では、以下のような記述があり、環境マネジメントシステムのPDCAを回すことで、結果的に環境パフォーマンスを継続的改に向上させることを狙っているという補足がついている。

ISO14001 A.1 一般要求事項
 この規格に規定された環境マネジメントシステムを実施することは、結果として環境パフォーマンスが改善されることをねらいとしている。従って、この規格は、改善の機会を特定しその実施を確認するために、組織がその環境マネジメントシステムを定期的のレビューし、評価するという前提に基づいている。この継続的改善の度合い、範囲及び期間は、経済的及びその他の状況に照らして組織によって決められる。環境マネジメントシステムの改善は、環境パフォーマンスの更なる改善をもたらすことを意図している。

 地球温暖化等深刻な環境問題に直面している現在、環境パフォーマンスの向上を保証しないISO14001の内容では環境保全に取組んでいることを示すには不十分である。また、ISO14001では、環境報告(情報公開)を要求事項としていないことも問題である。

EUでは、
EMAS規則は環境実績の向上、法律の遵守のほか、環境実績報告においてはISO14001を超えるものを目指しており、要件もISO14001よりも厳しい内容となっている。
ISO14001を EMAS制度への登録要件である環境管理システムとして統合することを正式に認めている。しかし、ISO14001の認定を受けた企業・組織がEMASに参加するには、環境レビューの実施や環境声明書の提出、環境声明書や環境パフォーマンスの検証を受けるなどの手続きがさらに必要となる。
としている(日本機械工業連合会 EUの環境政策より)。

このことは、日本でも同じである。環境省は2004年にエコアクション21環境経営システム・環境監査のスキーム(枠組み)を定めたが、そこでは以下のようなことが定められている。

エコアクション21認証・登録及び審査マニュアル
1.エコアクション21認証・登録制度の目的
 エコアクション21認証・登録制度は、
環境経営システム(環境マネジメントシステム)、環境への取組(環境パフォーマンス評価)及び環境コミュニケーション(環境報告)をひとつに統合した「エコアクション21環境経営システム・環境活動レポートガイドライン2004年版」に基づき、
-エコアクション21に取り組む事業者を、認定・登録を受けたエコアクション21審査人が審査し、認証・登録するとともに、この事業者の環境活動レポートを公開することにより、広範な企業、事業者、教育機関、公共機関、団体などにおける環境への取組を推進し、もって持続可能な社会経済の実現に貢献することを目的とします。
 ここでいう環境への取組(環境パフォーマンス評価)とは、組織のマテリアルフローとしてインプット3項目、アウトプット6項目を取り上げ、この中で、二酸化炭素排出量、廃棄物排出量、総排水量(又は水使用量)、化学物質使用量(2009年度版より)を必須項目としている。このことはISO14001で言うところの特定の環境パフォーマンス基準には言及した内容になっている。

エコアクション21のスキームは、ISO14001ではなく、EMAS を見習ったものであると思います。

 そうは言いながら、ISO14001の要求事項をよく見ると、環境パフォーマンスに言及している個所が次に示す2ヶ所ある。4.6マネジマントレビューの方は、2004年版で追加になっている。また、ある所で聞いた話ではJABは、ISO14001の次回改定で「環境パフォーマンスの継続的な向上」を追加するよう提案しているとのことであった。
全体的な流れとしては環境リスクから環境パフォーマンス重視に移行しているようである。

ISO14001:2004 4.5.1 監視及び測定
 組織は、著しい環境影響を与える運用のかぎ(鍵)となる特性を定常的に監視及び測定するための手順を確立し、実施し、維持すること。 この手順には、パフォーマンス、適用可能な運用管理、並びに組織の環境目的及び目標との適合を監視するための情報の文書化を含めること。

ISO14001:2004 4.6 マネジメントレビュー
 マネジメントレビューのインプットには、次のものを含むこと。
a) 内部監査の結果、及び法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守評価の結果
b) 苦情を含む外部の利害関係者からのコミュニケーション
c) 組織の環境パフォーマンス
d) 目的及び目標が達成されている程度
e) 是正及び予防処置の状況
f) 前回までの経営層による見直し結果に対するフォローアップ
g) 環境側面に関係した法的及びその他の要求事項の進展を含む、変化している周囲の状況
h) 改善のための提案

ここで言うパフォーマンス或いは環境パフォーマンスとは何であろうか。この内容はISO14004で言及している。

ISO14004 4.3.3.3 パフォーマンス指標
 組織は、測定可能なパフォーマンス指標を確立するとよい。このような指標を目的・目標の達成状況を追跡するために利用することができる。
また、組織はこれ以外の目的にも、例えば環境パフォーマンス評価及び改善のためのプロセス全体の一部としても利用することができる。
組織は、その著しい環境側面に対して適切な環境上の、マネジメントパフォーマンス指標(MPI)及び操業パフォーマンス指標(OPI)をともに使用することを考慮するとよい。

ISO14004では、前者の目的・目標の達成を追跡するパフォーマンス指標(OPI)の例を、表A.2で紹介している。この例に記載されている指標がISO14001:2004 4.5.1 監視及び測定の「パフォーマンス」という意味と理解できる。その一部を転載します。

■活動:化石燃料ボイラの運転
 著しい環境側面:燃料油の消費
 目的:再生不能資源の消費量の低減
 目標:1年以内に燃料消費量を20%削減
 実施計画:より効率のよい燃料バーナの導入
 指標:プロジェクト計画のマイルストーン
       ボイラ当たりの燃料の使用量

■サービス:商品の輸送及び配送(車両のメンテナンス)
 著しい環境側面:NOxの排出
 目的:車両メンテナンス効率を改善して、大気の質に与える好ましい影響を高める
 目標:○○年までにNOxの排出量の25%削減を達成
 実施計画:NOxのための主要なメンテナンスパラメータを特定する
        主要なNOx削減作業を採用したメンテナンスプログラムの変更
        コンピュータによる車両メンテナンススケジュールの最適化
 指標:オンタイムメンテナンス%
      NOx排出量/km

また、後者の環境パフォーマンス(MPI、OPI)については、ISO14004 4.3.3.3 環境パフォーマンス指標でその例を紹介している。この例のような評価指標が、ISO14001:2004 4.6 マネジメントレビューのインプットで要求している「環境パフォーマンス」であると理解できる。

ISO14004 4.3.3.3 実践の手引き―環境パフォーマンス指標の例
 ・使用される原材料又はエネルギーの量
 ・二酸化炭素(CO2)などの排出量
 ・完成品の量当たりの発生廃棄物
 ・原材料及びエネルギーの使用効率
 ・環境発生事象の件数
 ・環境発生事故の件数
 ・廃棄物のリサイクル率
 ・包装材料のリサイクル率
 ・製品の単位量当たりの輸送距離
 ・特定の汚染物の排出量
 ・環境保護への投資
 ・起訴の件数
 ・野生生物生息のために保留した土地面積

 組織の環境リスクの管理も然ることながら、環境パフォーマンスの向上にも積極的に取り組んでもらいたいですね。
そうでなければ、ISO14001の認証取得をしていたとしても、環境保全に頑張っているとは評価できない。
EUのEMAS重視や、国が環境立国宣言でISO14001を除外して、もエコアクション21を指定したのは、今のISO14001規格の内容では、時代の要請に対応できないからでしょう。

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