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2009.11.28

影響を及ぼすことができる環境側面 その5

私のブログ“コーヒー・ブレーク”の過去1ヶ月のアクセス件数ベスト3は
1 ISO9001:2008年改訂                1,293アクセス
2 現状打破・経営革新&課題達成型QCストーリー 461アクセス
3 影響を及ぼすことができる環境側面        391アクセス
となっています。

 1,2は1年程前に書いたブログで、現在企業は取組中のテーマでアクセスが多いのはある程度、理解できるが、3番目の
「影響を及ぼすことができる環境側面」は4年半前(2005年2月)に書いたもので、そのブログが今でも沢山の方にアクセスいただいていることに感謝しています。
それ程、この表現は紛らわしく分かりにくいということでしょう。

 ところで、ある大手企業のISO事務局の方より、このブログに対して反論のコメントをいただきました。反論の内容は、当時私自身、分からなくて混乱し大変迷った事柄です。
どうもありがとうございます。よい機会なので、私の記述の経過を説明します。

 反論の主旨は以下のような内容です。

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この欄で貴殿が言われている「影響を及ぼすことが出来る環境側面」の説明は誤りである。

「管理できる環境側面」とは、その実行を自分で決定できるものが該当します。
「影響を及ぼすことが出来る環境側面」とは「組織が影響を及ぼすことが出来る環境側面」となっています。
「グリーン購入」は自分で実施の可否を決定することが出来るので、「影響を及ぼすことが出来る環境側面」ではなく、「管理できる環境側面」となる。
「電気の使用」はこの欄(貴殿)の解釈でいけば「影響を及ぼすことが出来る環境側面」とも解釈できるわけですが、私の解釈では「電気の使用」は管理できる環境側面です。
このように、「管理できる環境側面」を「影響を及ぼすことができる環境側面」と解釈すると、本当の「影響を及ぼすことができる環境側面」が抽出されなくなるという間違いが起きます。実際に当社でもこの間違いが起きています。このような混乱は他社でも大なり小なり生じていると思われます。このような混乱を食い止めるためにも、貴殿のご理解をお願いし、正しい理解の普及に努めていただきたい。
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 このご指摘は、よくわかります。
昔のことですが、このブロクを書くとき
「グリーン購入」は管理できる環境側面ではないのか?
「電気の使用」は管理できる環境側面ではないのか?
大変悩みました。
でも、最後に「グリーン購入」も「電気の使用」も影響を及ぼすことができる環境側面と判断しました。
その理由は、ISO14001規格のAnnex A.3.1及びISO14004 4.3.1.3の両方に解説がある。
以下はISO14004 4.3.1.3の記述です。
「組織が直接的に管理できる環境側面のほかに、組織は、例えば組織が利用する製品(Annexの表現は物品)及びサービスに係るもの、並びに組織が提供する製品及びサービスに関係するものなど、組織が影響を及ぼすことができる環境側面にも考慮するとよい」

この説明から解釈すると「グリーン購入」は、組織が利用する製品・物品及びサービスに係るものに該当するので「影響を及ぼすことができる環境側面」ということになる。

即ち、ISO14001規格が規定する「管理できる環境側面」「影響を及ぼすことができる環境側面」とは、以下のようなケースが考えられます。
直接的に管理できる環境側面:
・自分の職場で管理できる活動×その活動による環境への直接影響
影響を及ぼすことができる環境側面:
・自分の職場で利用する(管理できる)製品・物品・サービス
  ×製品・物品・サービスの届け側での環境への直接・間接の影響
・自分の職場から提供する(管理できる)製品・サービス
  ×製品・サービスの受け手側での環境への直接・間接の影響
・外部に対して影響力を行使できる活動
  ×影響の受け手側での環境への直接・間接の影響

「電気の使用」という活動は、職場で利用する(管理できる)物品・サービスに該当し、電気を使うということは、電力会社が発電することにつながるので間接的に「CO2排出による地球温暖化」という環境影響につながります。この場合は、管理できるが直接影響ではないので「影響を及ぼすことができる環境側面」ということになります。

当時は、そう考えましたが100%の自信がなくて不安でした。
その後、半年程経って、日本規格協会よりISO14001 TC207だった吉田敬史・寺田博筆「ISO14001:2004要求事項の解説」が発行されたので、購入して確認しました。
ここから「ISO14001:2004要求事項の理解」79ページを引用します。

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影響を及ぼすことができる環境側面

 2004年改訂では、"管理できる側面"及び"影響を及ぼすことができる側面"の二つの領域が示された.ここで特に説明を要するのは、"影響を及ぼすことができる側面"である。この点を解説する目的で附属書には新たにリストが追記された(表4.8).組織が"管理することはできないにしても影響を及ぼす。

表4.8 影響を及ぼせる側面(利用する物/製品・サービス)を考慮
―直接的な管理以外に(A.3.1)―
 ・設計及び開発
 ・製造プロセス
 ・包装及び輸送
 ・請負者、供給者の環境パフオーマンス及び業務慣行
 ・廃棄物管理
 ・原材料及び天然資源の採取及び運搬
 ・製品の、流通、使用及び使用後の処理
 ・野生生物及び生物多様性

・・・・

 これまでも(2004年版改訂以前も)多くの組織が、ライフサイクルチェーンの下流側である自ら提供する製品及びサービスの側面については、ある程度の特定対象と考え、また管理も行ってきている。
これに対してライフサイクルチェーンの上流側ともいえる組織が使用する製品(物品)サービスの環境側面の特定及び管理は、ほとんど対象とされていなかったのが実情である。
ある組織が製品を作るのに材料を購入するとき、その材料の製造プロセスあるいは材料供給者のパフォーマンスなどは明らかに組織の管理対象外であると考えられるが、これらに関してもある程度の影響を及ぼすことができるのである。
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 何のことはない、ここの本の記載では「皆さんはこれまで製品の環境配慮設計などの環境側面はやっていたでしょうが、グリーン購入などは対象としていなかったでしょう。前工程で発生する環境影響も考慮しなさい。」といった程度の軽いニュアンスです。

 しかし、最近になって企業経営に役立つEMS、有効性ということが盛んに言われるようになってきました。
ここでは本来業務の環境側面の抽出が重要になってくる。
このやり方としは
・自分の本来業務の機能を明確にする。
・その機能に対して、その実行を自分(自職場)で実施できるものの中で環境に影響を及ぼすもの、他人・他職場・組織外の実行を通して環境に影響を及ぼすものを抽出する。
前者は「管理できる項目」「後者は影響を及ぼすことができる項目」となり、ご意見をいただいた判断基準そのものです。
 この場合、後者は100%「影響を及ぼすことができる環境側面」となりますが、前者の中にも「影響を及ぼすことができる環境側面」が入っている可能性があります。
というのが、私の考え方です。

 ⇒ 「本来業務の環境側面」

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コメント

低レベルの質問で申し訳ありません。
以下、
業種は、製造業です。
先日、定期サーベランスがあり、審査員から「影響を及ぼすことができる環境側面」の抽出について口頭改善指摘がありました。
内容は、「審査員:それぞれの資材仕入れ先、外注加工先、廃棄物業者等の側面を抽出すべきではないですか?御社が、加工・委託することにより、先方はエネルギー、騒音、廃棄物等発生するでしょ。・・」
「当社:大企業も全て対象ですか?」
「審査員:貴社が発言できる相手先でいいですよ」
と、言われました。確かに、環境側面は大まかには抽出できますが、それぞれの例えば、"A社における電気の使用、騒音の発生等","B社における電気の使用、廃棄物の発生" 等々の影響評価はどのように評価(重み付け)したら良いのかが、分かりません。
何か、ヒントを教えて下さい。

投稿: 中小企業ISO担当者 | 2010.04.09 18:01

中小企業ISO担当者様
 投稿ありがとうございます。
資材仕入れ先、外注加工先に対する影響を及ぼす環境側面を抽出する方法は、(1)悪さから抽出する方法と、(2)本来業務機能から抽出する方法、があります。
(1)については、私のブログ「影響を及ぼすことができる環境側面 その2」を見てください。
http://nsweb.cocolog-nifty.com/blog/2005/12/2_cd78.html

(2)については、「本来業務の環境側面」の中の購買部門の例を見てください。
http://nsweb.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-adf7.html

 著しい環境側面の評価は必ずしもスコアリングでやらなければならないものではありません。
ISO14004 4.3.1には、以下のように記述されています。

組織自身が著しさの基準を設定し評価する。
① 環境基準
  (影響の規模、深刻度及び継続時間、又は環境側面の種類、規模及び頻度など)
② 適用可能な法的要求事項
  (許可または規制などによる排出及び放出の制限など)
③ 内部及び外部利害関係者の関心事
  (組織の価値、対外的イメージ、騒音、臭気又は景観上の劣化など)

(1)の方法の場合は、①が適切と思います。環境基準を作ってスコアリング評価をする。
例えば、環境影響の発生の可能性×プラスの環境影響の大きさ

(2)の方法の場合は、③が適切と思います。
例えば、会議により決める。担当部門を交えた環境委員会等で討議して順位づけを行い決定する。

投稿: がまがえる | 2010.04.10 14:26

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