エンパワーメントの開発手法
私は日本アクションラーニング協会のアクティブステータスに登録しています。
協会では毎月研究会が開催されているが開催場所は東京なので殆ど参加する機会がない。8月27日は、たまたま東京出張中に開催されたので参加させてもらいました。
当日は丸ビル8階のコンファレンススクエアで午後6時30分より約2時間、関東学院大学経済学部大住莊四郎教授より「自治体職員を対象としたアクションラーニングの実践例」というテーマでお話を伺いました。
内容はアクションラーニングというよりは、住民が参加して行う街づくり、エンパワーメントの話でした。
(エンパワーメント=個人や集団が自らの裁量を拡大し、自主的な意思決定を促す能力をつけること)
大住先生は2009年2月、人口3万人以上の全国871の自治体にアンケートし541団体より回答をもらった。
⇒ アンケート調査結果
その結果、殆どの自治体ではマネジメントスタイルが確立していないことが判明した。
多くの自治体では先導管理型のマネジメントを指向しているが、実際はガバナンスの強化(事業仕分け)であってマネジメントにも至っていない。
大住先生の話では、マネジメントには、先導管理型のマネジメントと、エンパワーメント型のマネジメントの2通りがあるとの説明でした。
先導管理型のマネジメントとは
①問題解決のための完全な情報を入手する
②問題を解決する最適解を知る
③トップダウンで問題解決の指示をする
という方法である。例えば、以下のような方法をとる。
①市民代表で議論をする
②あるべき姿を決定する
③多数の市民に理解を求める
20世紀では、このような方法が有効であったかも知れないが、インターネット等メディアが発達し巷に情報があふれ、また刻々と変わっていく21世紀では、そのようなやり方ではうまく進まない。
大住先生は、エンパワーメント型のマネジメントに移行すべきであると指摘されている。
エンパワーメント型のマネジメントとは、
①問題解決のための情報は未知
②問題解決のための解は試行錯誤で決める
③全員参加型で創発を指向する
という考え方に基づく。例えば、以下のような方法をとる
①全員参加を指向する
②ありたい姿を共有する
③メンバーの主体性・自律性から
このようなエンパワー型のアプローチをとっている自治体は少数であるが、これまで、大住先生がこれらのエンパワーメント型をめざしたと自称している市民総参加のまちづくりを調べてみると、プロジェクトチームで進めているのが殆どである。プロジェクトチーム型では、チームに参加しなかった市民の共有が得られず課題が残っている。
その一例が松戸市で、松戸市では平成18年度にSWOT分析を用いて戦略策定をした。しかし、市民に共有されないので、平成20年度後期基本計画に着手し、平成21年度は市民フォーラム、平成22年度はタウンミーティンング、パブリックコメントへと展開しようとしている。
もう一つは、“町づくり”ではないが“町のブランド作り”を目指した“imagine YOKOHAMA”がある。
“imagine YOKOHAMA”は、横浜市の「都市ブランド」を市民の皆さんの思いと力を頼りに作っていくプロジェクトです。
imagine YOKOHAMAでは、種々の手法が使用されている。
ステップ1:テーマ・関係性を作る。 World Café(ワールドカフェ)
ステップ2:横浜住民の思いを引き出す。
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
ステップ3:テーマ具体化、アクションへ 。 AI
ステップ4:協働事業づくり 。 OST(オープン・スペース・テクノロジー)
ステップ5:事業の推進 。 AL(アクションラーニング)
大住先生の支援があってのことかもしれませんが、さすが横浜は先進的なことをやっていると感心しました。
この中で、私はALコーチなのでAL(アクションラーニング)については、よく知っているが、その他の組織開発手法は殆ど知らない。
大住先生からは、次のような手法があることが紹介されました。
World Café
「知識や知恵は、機能的な会議室の中で生まれるのではなく、人々がオープンに会話を行い、自由にネットワークを築くことのできる『カフェ』のような空間でこそ創発される」という考え方に基づいた話し合いの手法。
⇒ World Caféの説明
⇒ “imagine YOKOHAMA”での実施例
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
問いや探求(インクワイアリー)により、個人の価値や強み、組織全体の真価を発見し認め(アプリシエイティブ)、それらの価値の可能性を最大限に活かした、最も効果的で能力を高く発揮する仕組みを生み出すプロセス。全過程を終了するのに2~4日くらいかかる。
⇒ AIの詳細説明
OST
数人から数百人全員が一堂に会して話し合い、課題の共有とアクションプランの創造を行うファシリテーションプロセス。
⇒ OSTの詳細説明
私の気づきとして、この3つの手法の中でWorld Café というのは、色んな場面で使えるのではないかと思いました。
例えば、
(1)どこの自治体でも環境基本計画や行動計画を一方的に作っておきながら、協働という言葉で実行を促してくる。作る段階や実行の段階でWorld Café のようなイベントをやってはどうだろうか。
(2)ISO14001環境マネジメントにおいては、環境側面に対する構成員のエンパワーメントが要求されている。自分の経験では、これがうまくいっている会社はまれである。このような会社では社員の自覚を促す環境教育の方法としてWorld Café が使えるのではないか。
(3)先のブログ「現状打破・経営革新&課題達成型QCストーリー」において、“あるべき姿”を明確にする過程でWorld Café が使えるのではないか。
など、やってみる価値はあると思います。
World Café の詳細は以下の本に書いてあるようです。これから買って勉強します。
⇒ ワールド・カフェ~カフェ的会話が未来を創る~
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