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2009.07.07

水道哲学は今でもいきているか

 5月の北陸経営品質フォーラム例会はパナソニックのグループ企業が幹事会社で、PHP研究所から講師に招き、「創業者松下幸之助」と題して講話をしていただきました。

松下幸之助は、明治27年生まれ、パナソニックを一代で築き上げた日本屈指の経営者で、経営の神様とも、関係者からは社主とも称されている。自分と同じく丁稚から身を起こした思想家の石田梅岩に倣い、PHP研究所を設立して倫理教育に乗り出す一方、晩年は松下政経塾を立ち上げ政治家の育成にも意を注ぎ、平成元年に亡くなられた。

私自身も過去に松下幸之助の本を何冊か読んだことがあり、興味があって参加した。

講話の内容は、私自身にとっては、それほど目新しいものがなかったが、パナソニックのグループ企業の社員の皆様が毎朝どのような社訓を唱和しているかを知ることができた。
 ⇒ パナソニックの社訓
このような社訓を毎朝、唱和していると考え方も自然と変わるのでしょうね。

 ところで、講師の話の中で水道哲学の話が出てきた。

 水道哲学の話のキッカケは、幸之助が、水道がひかれた始めた昭和初頭の夏の暑い日、通りすがりの車夫が暑さしのぎに水道の蛇口に口を近づけて水をおいしそうに飲んでいるのを見た。周りの人はそれを見て誰もそれを咎めようとしないことから考えついたそうである。
この考えを基に、幸之助は昭和5年大阪の中央電気倶楽部に松下電器社員全員を集めて、松下電器が将来に向かって果たしていくべき使命について訴えた。
「産業人の使命は貧乏の克服である。そのためには物資の生産につぐ生産をもって、富を増大しなければならない。水道の水は加工された値のあるものであるが、道ばたの水道水を通行人が飲んでも咎められることはない。それは、その量が豊富で、安価だからである。産業人の、そして松下電器の真の使命は、物資を水道の水のごとく安価無尽蔵に供給して、この世に楽土を建設することである。」

これは有名な話で、パナソニックでは現在も生きている。昨年11月パナソニックが三洋電機を買収したときも「水道哲学の展開」と大きく報道された。

しかし、私はこの考え方にかねてから疑問を持っていたので、主催していただいたパナソニック関係者には失礼とは思いましたが質問してみた。

「水道哲学は当時としては画期的で立派な考え方だと思うのですが、江戸時代は3億人だった地球の人口が、現在60憶人、やがて90億人に、と爆発的に増えている。90億人の皆が物質の豊富な生活を目指したら地球が3つあっても足りないといわれている。もし、今、松下幸之助さんが生きておられたら、この状況をどう思われるでしょうか?」

Sustainability1population
 世界人口推移グラフ[出典:UNFPA(国連人口基金)東京事務所]

当日、講師からは、この質問に対する明快な答えがなかったが、後日6月例会でPHP講師からの補足という形で以下のような文書を頂いた。
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【水道哲学は今でもいきているか】
「経営秘伝」に掲載されている文面の抜粋
・生産者がいいものを作っていると満足してしまったらおしまい
・わが国の状態だけを見てもう十分に安いと考えたとすれば、それは豊な国の傲慢
・わが国だけを見てものを考える時代ではない。世界全体、人類全体のことを考えんといかん時代
・いいものを生産者の使命だという考えはこれからますます必要になってくる。
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水道哲学という考え方は、地球環境問題を考慮しない経営学においては素晴らしい内容と思います。
2006年度にハーバードビジネスレビューの最優秀論文となった「戦略的CSR」もこの考え方の発展形のように思える。

その後、GEがエコエマジネーションヘルシーエマジネーションという形で本格的に導入し有名になった。トヨタ、キャノンと言った日本の大企業も戦略的CSR模索しているようです。

でも、PHP社講師の答えは、私の質問内容にまともに答えていない。視点が違うように思います。

「世界全体、人類全体のことを考えんといかん時代」という所が違う。
「人間は地球に住む生き物の一種に過ぎない。地球全体、生き物全体のことを考えんといかん時代」
となるのでないだろうか。

私が思うには、現在の人口の急増を放置しておいて水道哲学が実現されれば、先ずは地球の温暖化が発生する。いや、すでに顕在化している。これは国際的な合意ができつつあり2050年頃には解決に向かうかもしれない。
しかし、その次に来るのは資源の消費(枯渇)や生物多様性の喪失である。これは2100年位にその現象が顕著になるのではないか。

この問題の根本的な解決方策は、地球の人口を抑制することである。

現在、どこで人口が急増するかというとアジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの開発途上国である。
生活が貧しければ、それを補うためは働き手となる子どもを沢山産む。
逆に日本、欧州、北アメリカの先進国は人口が減少する。

要するに人口を抑制するには、開発途上国を豊にすればよい。しかし、その過程で地球の温暖化や資源の枯渇という問題が発生する。
これは、水道哲学を実践すると人口問題の解決には良いが、その過程で地球環境がますます悪化するという矛盾となる。
ここで、発想の転換が必要になる。

人は豊になればよいのであって、豊になるために物質は必要か、という問題である。

物質ではなく心が豊かになる経済発展を目指すこと。

例えば

 ブータン国の国民総福祉度(GNH)の考え方

 ローマクラブが提唱した 資源生産性(環境効率)の向上:ファクターX

 ソーシャルエコノミーの普及

”水道哲学”を現代に実践するには、このような考え方を取り入れて方向修正する必要があるのではないでしょうか。

<本の紹介>

  競争優位のCSR戦略

  松下幸之助の本

  ファクター4―豊かさを2倍に、資源消費を半分に

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