「有効性監査」ができる内部監査員を養成する
ここ3ヶ月の間に、4社でISO9001:2008内部監査員養成研修”有効性監査”の手法習得のお手伝いをさせていただきました。
今月中に、もう1社依頼を受けているので5社になります。
これまではISO9001の内部監査員よりもISO14001の内部監査員養成研修の依頼が多かったが、ここへきてISO9001内部監査員養成の依頼が集中しているのはISO9001:2008改訂の影響のようです。
依頼をいただいたキッカケは、どの企業様も認証機関より「貴社の内部監査は監査のチェック項目が、定文化しており有効に行われているとは思えない。適合性監査から有効性監査に内部監査の観点を改善するよう検討しなさい 」との指摘を受けていることのようでした(新規認取得の場合を除く)。
認証機関が本当にそのようなことを言うのだろうか? 「良い指摘をする認証機関ですね、どこの認証機関ですか?」と尋ねてみると、J△A、JA△O、JS△とそれぞれ違った認証機関の名前が出てきた。
これは、これはどうも2008年版改訂の際に重要課題となった"Output Matters"の問題に関連して認証機関側が一斉に対応しているようですね。それと、ISO19011「マネジメントシステム監査の指針」で、内部監査プログラムのレビューと継続的改善を要求していることにも原因があるかもしれません。
ここでは、”適合性監査””有効性監査””付加価値監査”の違いと、内部監査における有効性監査の概要について紹介します。
● 監査の定義
”適合性監査”とは
組織がISO 9001/ISO14001の要求事項に適合しているか、組織が規格の要求事項に従って定めた手順書・作業指示書に従って運営されているかどうかを記録や物理的は状態の客観的証拠をチェックすることで確認する監査。
”有効性監査”とは
「マネジメントシステムの有効性」を検証するため,アウトプットに着目し,“結果”または“実施された程度(パフォーマンス)” が目標又は期待された結果を生み出すようになっているかどうかを判定し、改善の機会を提供する監査。
”付加価値監査”とは
審査の過程で、組織に役に立つ価値を与えることができる監査。
適合性監査(審査)は、認証機関の審査員が認証登録や更新の時に行う監査(審査)で、多くの組織では、これをまねて内部監査が行われているのが実情のようで、これを何年も続けていて内部監査が形骸化してしまった企業様が多いように見受けられます。
有効性監査と付加価値監査は似ているようでもあるが、少し違っている。
付加価値監査については、ISOTC176の「審査の最適実施要領検討グループ(APG)」がその指針を発行しているので、こちらを参照してください。
● 有効性監査について
ISO9000 3.2.14 「有効性」の定義
計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度。
ISO9001品質マネジメントシステムで規定されている有効性
これには2つあります。
「品質マネジメントシステム(QMS)の有効性の継続的改善」
組織のしかるべき部門及び階層は、品質方針と整合した品質目標を設定する。組織は、設定した目標の達成に向けて活動し、品質目標が達成できなかった場合は、その不適合について、システムに起因する原因を究明し、是正処置及び予防処置を行い、システムが効果的に機能するように継続的に改善すること。
―この要求事項はISO9001規格の至る所で出てくるが、本当の意味をよく理解されていない企業様が多いようです―
「プロセスの有効性」(ISO9001 4.1c)~f)、8.2.3)
QMSの目的を達成するために必要と決定したニットプロセスが、効果的に運用及び管理されているか、その能力の指標及び量的基準(有効性指標)を決めて達成状況を確認すること。
計画どおりの結果が達成できない場合には、適切に、修正及び是正処置をとらなければならない。
有効性監査では、基本的に上の2つを判定し、改善の機会を提供することです。
経営者・管理責任者の対する内部監査では、主として「QMSの有効性継続的改善」を監査する。
ユニットプロセス(部門)での監査では、QMSの有効性継続的改善のユニットプロセスに関連する部分と、プロセスの有効性のPDCAの両方を監査します。
● ユニットプロセスの監査のポイント
最初に部門責任者(プロセスオーナー)にインタビューを行い、その後プロセスフローに従って現場でのインタビュー及び観察を行います。
<最初に部門責任にインタビューする>
部門責任者への質問(確認事項)
・そのプロセスの目的は何か。
・品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善に向けて品質方針と整合した品質目標が設定され、実施され、PDCAが回っているか。
・設定した目標のメトリックス(評価指標・特性値)が適切か。
・プロセスの有効性指標が設定され、プロセスアプローチに従ってPDCAが回っているか。
・目標は期待された結果を生み出すようになっているか。
・アウトプットレベルの改善に向けて、プロセスの運用により得られた知見が活用されているか。
確認した結果、品質目標の未設定や、目標の未達成が放置され是正処置がとられていない場合は不適合となります。目標のメトリックスが悪い、設定された目標値に妥当性がない等の場合は改善の機会となります。
ここで、監査員が特に注意する点は「目標は期待された結果を生み出すようになっているか」という質問です。
これを、どうやって確認するか、監査員にはその力量が必要です。
「目標は期待された結果を生み出すようになっているか?」を確認する場合は、目標特性によって見方が違ってきます。
目標を達成するステップには、要因分析型、施策実現型と課題達成型と3つの型があります。
品質問題の多くは問題解決型で、次にステップで取り組みます。
① 改善の理由(テーマの選定)
② 現状の把握(パレート分析・ヒストグラムなど)
③ 目標の設定
④ 要因の解析(特性要因図など)
⑤ 対策の立案
⑥ 対策の実施
⑦ 効果の確認
⑧ 標準化と管理の定着
⑨ 改善処置が完了したプロセスの有効性及び効率の評価
環境・コストなどの改善は施策実現型で、次のステップで取り組みます。
① 改善の理由(テーマの選定)
② 課題の明確化
③ 方策の立案(改善案の積み上げ)
④ 最適策の実施
⑤ 効果の確認
⑥ 標準化と管理の定着
⑦ 改善処置が完了したプロセスの有効性及び効率の評価
売上向上、新プロジェクトなどのこれまでに経験のない課題は課題達成型で、次のステップで取り組みます。
① 改善の理由(テーマの選定)
② あるべき姿の設定(攻め所と目標の設定)
③ 成功シナリオの追求
④ 成功シナリオの実現
⑤ 効果の確認
⑥ 標準化と管理の定着
⑦ 改善処置が完了したプロセスの有効性及び効率の評価
これはISO9004:2000付属書B「継続的改善のためのプロセス」で紹介されている通称QCストーリーと呼ばれるものです。
このプロセスがキチンと計画されていない場合は、期待された結果を生み出すようになっているとは評価できないでしょう。
<プロセスの流れに沿った監査>
製品実現のライフサイクルが顧客から提示された仕様に基づく場合は、幾つかのプロジェクト事例をもとに、可能な限り現場で流れに沿って監査します。量産品の場合は、QC工程表を基に監査します。
監査のポイントは、製品実現のフロー(下の概念図参照)に従って、顧客のニーズを満たすため、インプット、プロセス、アウトプット→次のインプット、プロセス、アウトプット―>>のそれぞれの測定がキチンと行われ、その一貫性があるか。
部門責任者のインタビューで把握した問題個所の原因が、インプットにあるか、プロセスにあるか。プロセスのある場合は、手順、人材、インフラ、作業環境、支援プロセスのいずれにあるかを探り、改善の機会をアドバイスする。
製品のライフサイクルフローの概念図
有効性監査の内部監査養成研修の期間は、新規内部監査員養成の場合は2日間、すでにISO9001:2000の内部監査になっている方には1日間で行っています。
研修概要は、弊事務所の内部監査養成研修の有効性監査のページにありますので、興味のある方は、気軽に声をお掛けください。
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