« 温室効果ガス削減の中期目標 | トップページ | 市民風車への環境投資 »

2009.05.10

改正省エネ法と環境目標の妥当性の再確認

昨年1月のブログ「二酸化炭素排出量と省エネ法改正予定」で、平成21年4月より省エネ法が変わるというお話をしました。
また、2008年12月より改正省エネ法と間接的に連動する「国内排出量取引制度(試行排出量取引スキーム)」が試行的に開始され、その内容が明確になってきました。

省エネ法についての今回の大きな変更点は、従来、工場や事業場単位だったエネルギー使用量の管理が「事業者(企業)」や「連鎖化事業者」と呼ぶフランチャイズ単位に拡大されたことです。
また、事業所ごとにエネルギー管理統括者を選任すること、従来は、毎年、使用量の報告をするだけでよかった原油換算で年1500kL以上の第二種指定事業者にも、中期計画を策定し年1%以上の削減が義務付けられたことです。

Syouene
対象となる特定事業者には、行政より案内が来ており、具体的内容をここでお話するのは”釈迦に説法”のようなものですので省略します。
ここでは、ISO14001やEA21に取り組んでいる特定事業者以外の事業者の方々への影響について考えてみます。

1.EMSにおける二酸化炭素排出量(又は省エネ)目標の目標設定値の妥当性
 私の経験では、事業者様にお伺いすると環境目標として二酸化炭素排出量(又は省エネ)を策定されていないという場合はなかったが、その目標値は3年間に1%~6%まで開きがありました。
 地球温暖化防止の観点から言うと、先進国は2005年から2050年までに60~80%削減するという国際的合意ができており、これを単純に分割すると、3年間で5%となる。3年間で1%という目標でもマネジメントシステム上は不適合とはならないが低すぎるように感じていました。
特に原油換算で年700L~3000L未満の中堅企業の目標数値が低いように感じました。
 このような低い目標を設定された背景には、小さな会社では、人によるムダを排除して改善できる余地が大きい。会社が大きくなると設置した設備によって決まる比率が高くなり、設備的な改善をしないと1%の改善も難しくなる。しかし、設備改善しようとすると投資回収年や資金で行き詰る。また、実務担当者は経営者の顔色を見て踏み込んだ提案をしない、ということではないかと推測します。

 しかし、今回の省エネ法の改定で、この程度の目標ではステークホルダーからは評価されないという状況になったと思います。
先にも述べたように改正省エネ法では、第二種指定事業者にも年1%以上の削減が義務付けられた。また、先行する東京都では、2010~2014年の「第一計画期間」では8%もの削減を求める、と報道されています。

また、試行排出量取引スキーム(試行制度)では、大手企業を中心に455社が、自主的に自社のCO2削減目標を設定して参加したとされていますが、実際にはどのような目標を設定されているか?
日経エコロジー6月号(ECO JAPAN 5/1号)には、業界単位での参加を除く参加企業193社にアンケート調査した結果、回答のあった企業の目標値を掲載されています。
その記事では、企業ごとに基準年度や目標年度が異なり分かりにくいので、平均値を出して比較して見ると、総量目標を設定した企業が21社で年平均2.4%(3年間で7.2%)、原単位目標を設定した企業が22社で年平均1.6%(3年間で4.8%)です。

勿論、東京都では、そのための助成金低利子融資制度のほか、CO2削減が難しい場合は他社が行ったクレジットを購入して目標を達成できるとしている。

東京都以外の道府県でも、国の助成金や低利子融資の支援制度ができています。以下はその一例ですが、その他にも地方自治体ごとに支援制度があります。
 環境省自主参加型国内排出量取引制度(助成金)
 日本政策金融公庫の環境・エネルギー対策資金(低利子融資)
資金がないからできないということは、段々と理由にならなくなりつつある状況です。

2.最低限、取り組みたいこと
 省エネ法には、法の対象となる企業がエネルギーを合理的に行う上で最低限、取り組みたいことをまとめた「工場等判断基準」があります。今回オフィスビル用の判断基準が追加になりました。
全体構成は次のようになっています。

オフィスビルなどの業務部門向け判断基準
① 空気調和設備、換気設備
 新設時に、個別空調やヒートポンプなどの高効率機器を採用する。
② ボイラー設備、給湯設備
 ボイラーの空気比などを基準値に従って調整する。
③ 照明設備、昇降機設備と動力設備
 照明をJIS規格に沿って使う。昇降機の停止階や台数を絞るなど効率運転する。
④ 受変電設備、BEMS
 受変電設備の稼働台数を調整したり、負荷を適正配分したりして効率よく使う。
⑤ 発電専用設備とコージェネレーション設備
 コージェネレーション(熱電併給)設備は熱と電気が十分利用できるよう効率運転する。
⑥ 事務用機器、民生用機器
 トップランナー基準以上の機器を採用する。
⑦ 業務用機器
 季節や日時、時間帯、不要時などを考慮して管理標準を作成する。
⑧ その他
 デナントビル業者は、テナントごとのエネルギー使用量をテナントに情報提供する。

工場など産業部門向け判断基準
① 燃料の燃焼の合理化
 ボイラーの空気比などを基準値に従って調整する。小型還流ボイラーを追加する。
② 加熱、冷却と伝熱の合理化
 加熱などに使う熱媒体を管理して、熱媒体による熱量の過剰な供給をなくす。
③ 廃熱の回収利用
 基準値に従って排ガス温度を低下させ廃熱回収率を高める。
④ 熱の動力などへの変換の合理化
 発電設備やコージェネ設備を効率よく管理・稼働させる。
⑤ 放射、伝導、抵抗などによるエネルギーの損失の防止
 熱媒体の配管や加熱用設備などの断熱、受変電設備などを適正に管理・保守する。
⑥ 電気の動力、熱などへの変換の合理化
 照明設備、昇降機、事務用機器、民生用機器などを適正に管理・保守する。

詳細は、改正された「工場等判断基準」「同 別表」 を参照してください。

この基準は特定事業者向けのものですが、特定事業者でなくても該当する場合はGMPとして活用されることが望ましいと思います。
昨年11月、国内取引量制度についてJCTXの向井代表の講演を聞いたとき、向井代表は(特定事業以外の)中小企業の省エネ指導をしているが、このような基本的なことを知らない会社が大変多いと話されていました。

特に、次の点です
「ボイラーを使用している場合が、空気比などを基準値に従って調整する。」
以下は具体的資料です。
  燃焼設備の空気比管理(解説)
  病院における実施例(この中の事例1-3)

「業務用機器について、季節や日時、時間帯、不要時などを考慮して管理標準を作成する。」
以下は省エネルギーセンターの具体的資料です。
 「エネルギー管理体制の整備」
 原単位管理ツール

その他、以下のようなパンフレットも発行されています。
 「業務用ビルにおける省エネ推進のてびき」
 「工場における省エネ推進のてびき」

しかし、ここに紹介されている「工場等の判断基準」や省エネ改善のパンフレとは、エネルギー管理者を対象に作成されているようです。
利益を追求する企業活動において最も効果的な省エネ活動は、エネルギー管理者以外の各部門で実施する業務能率向上活動です。
先の私のブログ”「生産能率の向上」と「二酸化炭素排出量削減」の関係”も参照してください。

|

« 温室効果ガス削減の中期目標 | トップページ | 市民風車への環境投資 »

d 省エネルギー・新技術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 温室効果ガス削減の中期目標 | トップページ | 市民風車への環境投資 »