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2009.05.03

温室効果ガス削減の中期目標

環境省の報道発表を見ると、今年6月には国の温室効果ガス削減の中期目標が設定され、12月にコペンハーゲンでCOP15=2013年以降の国際的な枠組み交渉 が開催される。
昨年の洞爺湖サミットでは、福田首相が地球の平均気温の上昇を2℃程度に抑制するためには2050年までに地球全体で50%減、日本は60~80%削減すること、さらにこの長期目標を達成するためには、今後10~20年以内に世界全体の排出量をピークアウトさせなければならないことを宣言した。
この根拠は、国立環境研究所の下図のデータGHG 475ppmを想定したものらしい。
445ppm
図 GHG 475ppm – 国環研によるシナリオ 
(安井至「市民のための環境学ガイド」資料より)

しかし、国連大学副学長の安井先生の「市民のための環境学ガイド」の資料を見ると、先進国と途上国の人口比は1:4、途上国の排出量を考慮すると、先進国は排出量をゼロにしなければならない。国内の排出は60~80%カットでよい、残りの40~20%は、開発途上国へのODAなど技術移転によりオフセットで零化する、ことを提案されている。

一方、2020年までの中期目標については、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告では
2050年GHG 450ppmの場合「先進国は2020年に1990年比で25~40%
2050年GHG 550ppmの場合「先進国は2020年に1990年比で10~30%
の削減が必要という。

ところが、麻生内閣の「地球温暖化の中期目標に関する意見交換会」資料を見ると、「中期目標の選択肢」として1990年比+6%~-25%までの6つの案を基に審議している。
① 案の+6%といことはあり得ないが、⑥案が先進国一律-25%という設定でありこれもありあえない。③~⑤の-7%~-15%の間に落ち着くような気がする。

他の国では、EUは平均-20%、アメリカのオバマ大統領は、アメリカの目標について2020年までに1990年レベルに戻す(2005年比で-14%)と言っている。
各国がどのような目標を決定するか分からないが、このような状況では、先進国全体では1990年比で-10%~-15%(2005年比-17%~-22%)というところだろうか??
先の図で言えば、GHG 550ppm 平均気温の上昇で2.5℃の線となる。
平均気温上昇を2℃に抑制するという前提は反故になり、何度までなら許容するかという問題に戻る。

もう一度、平均気温の上昇と被害の関係に戻って見てみると
1℃の上昇なら、アンデスなど小氷河の減少による水の供給源がなくなる。最大で30%の動植物の種が絶滅する。
2℃の上昇なら、アフリカの農業には被害、水が20~30%減少、アフリカでマラリアの被害増大、沿岸地域の洪水増加
3℃の上昇だと、ヨーロッパの干ばつ、アマゾン森林の崩壊
4℃の上昇だと、ツンドラ地帯の生態系の破壊、沿岸部で年数百万人に洪水の被害

但し、世界全体の排出量を10~20年以内にピークアウトできない場合は、温暖化を一気に加速させる加速させる可能性がある。

上の図から見ると、GHG 550ppm、平均気温2.5℃上昇の線であれば、排出量のピークアウトは20年後で最悪一歩手前のところ、ヨーロッパの干ばつも避けられるかも知れない。
しかし、アフリカやバングラデッシュなどの開発途上国は甚大な被害を受ける。

これは、先進国に住む人たちの良心と経済的な痛みとの間で決まる問題でもある。

内閣府では、5月16日まで、この辺りについてパブリックコメントを募集している。

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コメント

■【主張】温室ガス中期目標 実現可能な数値にしたい―地球温暖化二酸化炭素説がいつまでも主要な学説であり続けることはあり得ない!!

こんにちは。私は、温室ガス削減目標は、最も低い4%に設定すべきと考えます。なぜなら、日本の省エネ技術はすでに10年くらい前から実質上世界一であり、産業構造など考えると、世界で最もco2削減に貢献しているからです。さらに、地球温暖化二酸化炭素説がいつまでも、主要な学説であり続けることはあり得ないからです。事実、昨年あたりから太陽の黒点活動が停滞しており、この影響で地球寒冷化に向かう可能性もあります。詳細は、是非私のブログをご覧なってください。

投稿: yutakarlson | 2009.05.08 10:45

yutakarlsonさん

書き込みありがとうございます。
何%が良いかは、多いに議論されるべきと思います。
ただ、この問題は、自国にとっての損得で考えるか、責任・良心で考えるか、によって答えが全く異なると思います。

また、「温暖化は主に太陽活動の影響である」という論文に対しては、地球温暖化研究の下記専門家8名より、詳細な反論が出ています。
 東北大学 明日香壽川
 気象研究所 吉村純
 海洋研究開発機構 増田耕一
 海洋研究開発機構 河宮未知生
 国立環境研究所 江守正多
 国立環境研究所 野沢徹
 国立環境研究所 高橋潔
 海洋研究開発機構 伊勢武史

地球温暖化問題懐疑論へのコメントVer.2.4 議論7
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/china/asuka/kaigiron_ver24.pdf

こちらの方もご覧いただいてはいかがでしょうか。

投稿: がまがえる | 2009.05.08 21:52

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