ISO9001の要求条項の適用除外について
昨年11月にグローバルテクノ社の”ISO9001:2008規格改定コース”を受講しました。
その内容はブログ「ISO9001:2008年改訂」で紹介させていただいています。
しかし、認証機関(というよりは審査員)によっては、これまで規格条項の逐条審査や間違った解釈で審査をしてきた経緯から、本当にこの解説通りに運用するのだろうか、お客さんにコンサルティングをする手前、不安に思っていた。
そこで、JAB系認証機関の研修を受けた友人に解説テキストを送っていただき、自分自身は4月初めUKAS系認証機関の規格解説の説明会に参加した。
グローバルテクノの研修と両認証機関の解説の3つを見比べてみると内容に大差はない。
また、3月に開催された第5回JAB公開討論会の公開資料を見ると
「審査を変える」 「ISO 9001逐条審査からの脱却」
ということを言っている。
認証機関もどうやら本気になったようだ。これならば、自分が先の書いたブログ「ISO9001:2008年改訂」の内容は、大筋で間違っていないと確信した。
認証機関の説明会の終了後、担当の方に「日本では規格の条項通りに書いた品質マニュアルが多いですね」という趣旨のことをいったら「認証機関の立場として、規格条項順ではなく、自社のQMSのプロセスに沿った品質マニュアルに変更することを推奨するが、やりなさいとはとても言えないですよ」との返答でした。
この辺は、ISO9001:2008規格の意味を正しく理解していれば、そこまでは踏み込まないということでしょう。
ところで、認証機関の説明会のときに、自分がこれまで適用除外についての理解が足りなかった点に気づいた。
以下は適用除外についての頭の整理です。
ISO9001:2008規格書
「1.2 適用
・・・・・
組織及びその製品の性質によって、この規格の要求事項のいずれかが適用不可能な場合には、その要求事項の除外を考慮することができる。
このような除外を行う場合には、除外できる要求事項は箇条7に規定する要求事項に限定される。除外を行うことが、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たす製品を提供するという組織の能力又は責任に何らかの影響を及ぼすものであるならば、この規格への適合の宣言は受け入れられない。」
従来は自分の組織に「設計・開発がない(7.3)」「特殊工程がない(7.5.2)」「製品の保存がない(7.5.5)」「監視及び測定機器がない(7.6)」といった理由で適用除外を決めていたケースがあったが、これは「該当条項がない」ということと「適用除外」ということを混同している。「適用除外」と「該当条項なし」を区分する必要がある。
箇条7 製品実現 における「適用除外」とは、品質マネジメントシステムの目的を達成する、すなわち、顧客から明示された、義務として、当然のこととしてやらなければならない要求事項に対応した製品を作り出すのに必要な業務、即ちユニットプロセスを明確にし、ユニットプロセスに適用される規格の要求条項を明確にする過程で、製品実現のあるべきプロセスを製品の持つ性格から本質的に適用できないマネジメントシステムの要素(条項)が存在する、という場合だけである。
例えば、「製品の設計・開発は別の会社で行われ、その会社が設計・開発の責任権限を持っている。当社はその会社から製作図面の提供を受けて製造のみ行っているので『7.3設計・開発』を適用除外する」といったことである。
「7.5.2 プロセスの妥当性確認」「7.5.5 製品の保存」「7.6 監視機器及び測定機器の管理」と言った条項は、組織の製品実現のために対応が必要な条項であり、条項を適用した上で、もし該当するプロセスが存在しないのならば「該当するプロセスが存在しない」という扱いになる。「適用除外」という扱いにはならない。これは、現在顧客に提供している製品の実現過程では、たまたま存在しないということであって「条件が変わる(新規製品を投入する、製造条件を変更する等の)場合には存在する可能性があるので、その時点で確認する」という意味を含んでいる。
しかしながら、実際には「これらの該当するプロセスが存在しない」ということも考えにくい。
一般的には「7.5.2 プロセスの妥当性確認」は、どの組織においても存在するであろう。その理由は、先のブログ”ISO9001:2008年改訂”の「3. プロセスの妥当性確認」を見て頂ければ分かると思います。
「7.6 監視機器及び測定機器の管理」のプロセスが存在しないということもあり得ない。
ISO9001:2008では、監視機器及び測定機器の英文が “monitoring and measuring devices” から “monitoring and measuring equipment” に変わった。測定機器とは、ISO9000:2005 用語 3.10.4 測定機器(measuring equipment)で 「測定プロセスの実現に必要な、計器、ソフトウエア、測定標準、標準物質又は補助装置若しくはそれらの組み合わせ」と定義されている。また、”equipment” の意味を英語辞書で調べてみると、設備、装置のほか、準備、知識、技能といった多くに意味があることが分かる。単に測定に用いる計器や、標準だけを明確にすることを要求しているのではない、調査、点検、シュミレーションといった内容を含んでいる。
このような広範囲な監視機器及び測定機器を含めた、監視及び測定プロセスはどの組織にも存在すると思います。
「7.5.5 製品の保存」の製品はハードウェア製品であり、サービスのような無形製品は該当しない。
しかし、ここでいう保存の範囲は内部処理から指定納入先への引き渡し、すなわち製品実現の全過程である。サービス業であっても、引き渡しの中にハードウェアが含まれるときは、その基となる原材料などの購入製品や中間製品も保存の対象に含めなければならない。
| 固定リンク
「i ISO9001 」カテゴリの記事
- リスクに基づく考え方(2024.04.16)
- システム思考/システムアプローチ(2024.04.15)
- プロセスアプローチとは(2024.04.14)
- プロセスとは(2024.04.13)
- ISO9001:2015 内部監査チェックリストサンプル(2016.04.07)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント