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2008.12.02

現状打破・経営革新&課題達成型QCストーリー

 私はこれまで経営品質QCストーリーアクションラーニングをそれぞれ別々の機関で教育を受けてきた。これらはどこで、どう繋がっているのか頭が混乱していたが、先日受講した日本経営品質協議会2008年度セルフアセッサー認定更新コースで、それらのステップは基本的に同じであることに気づいた。

日科技連出版「課題達成型QCストーリー」によると、QCストーリーの中には、①問題解決型QCストーリーと、②課題達成型QCストーリーがある。
「①は現状の悪さの分析から出発する方法で、QCサークル活動で用いられる、現場における殆どの問題解決は①問題解決型QCストーリーで解決できる。一方、今までやったことのない新しい業務に取り組む場合、これまで散々改善活動を行って悪さの改善はやり尽くした、新しい方向から現状を打破したい、という場合には②課題達成型QCストーリーが用いられる。」と言ったことが書かれている。

しかし、経営者の仕事というのは、戦略設定とリーダーシップ=これまでやったことない仕事・現状打破を行うこと、そのための社内の意識を高めること、が主体である。
即ち問題解決の方法は、経営者に近くなる程「課題達成型QCストーリー」が多く、現場業務に近くなる程「問題解決型QCストーリー」が多いということになる。この中間の管理者は、問題に応じて両方の解決方法を使い分けるのが良いということであろう。
「問題解決型QCストーリー」は、QCサークル発表から生まれたものであるが、改善手法として用いると効果的である。その内容については広く知られているので、ここでは省略し、「課題達成型QCストーリー」について紹介します。

 経営品質では課題設定型問題解決のことを「問題解決型QCストーリー」とは呼ばず「経営革新」或いは「現状打破」と呼んでいるが、その進め方は殆ど同じである。
というよりは「経営革新」のステップは、マルコムボールドリッチ賞の実施手順・フレームワークでできていて欧米のビジネス界では特別なことではなかったのかも知れない。日本では、このステップを後で「課題達成型QCストーリー」という名称で「QCストーリー」に追加されたのであろう。

図1は経営品質における組織プロフィールの設定から改善課題に至る過程の概念図である。
図2は「課題達成型QCストーリー」のおけるテーマの設定から、目標設定、攻め所と改善安に至る概念図である。
進め方が驚くほど類似していることが分かるであろう。

実施ステップは以下のように共通している。
・表面上の問題から根本的問題、あるいは真実のも目的を明確にする。
・そこから「あるべき姿」を設定する。
・「あるべき姿」と現状とのギャップを、フレームワークを用いて分析する。
・ギャップ分析から重要課題テーマを選んで改善計画を立てて改善する。
以上が課題を解決するブレークスルーのステップである。
違っているのは、ギャップ分析のフレームワークだけで、経営品質ではアセスメントのフレームワーク「リーダーシップ」「経営における社会的責任」「顧客・市場の理解(選定)」「戦略の策定と展開」「個人と組織の能力向上」「付加価値を創造するプロセス」となっているのに対して、「課題達成型QCストーリー」では「情報」「人」「設備」「予算」というフレームワークを用いている。

0812jqas
 図1 日本経営品質賞における経営品質向上のステップ

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 図2 「課題達成型QCストーリー」の概念図
 (日科技連出版「課題達成型QCストーリー」の12,13ページをベースに西村が作成しました)

具体的にどんなことが課題テーマになるか?アクションラーニングとの関係はどうなるか?

<経営課題の例>
日本アクションラーニング協会発行のベストプラクティスの中に韓国LG電子のテーマ事例が紹介されている。
・北米において拡大する50インチテレビの奨励戦略をどうするか。
・欧州における冷蔵庫シェアを2006年度に60%までに到達させるには
・携帯電話におけるデザイン確認の手法
LG電子では、テーマの設定プロセスの後、各テーマについて5つのモジュールを設定してすすめているが、その第一モジュールの状況分析・問題課題分析においてアクションラーニングが用いられている。
 日本の例では富士ゼロックス販売本部の事例(品質推進G赤津氏)で、改善課題が設定された後の改善施策を思考する段階で、アクションラーニングが用いられている。
アクションラーニングはこのような場面で活用する有効なのであろう。

<QCサークル活動の例>
日科技連出版「課題達成型QCストーリー」の中では、次のような実例が紹介されている。
・販売部門・新規業務「貴金属ショップ・ディスプレーのドレスアップ」
・製造部門・新規業務「K社向けA製品の内製化による加工費低減」
・事務部門・現状打破「事務処理の合理化―ペーパーレスへの挑戦」
日科技連のQCサークルのステップは触れていませんが、この例は日本にアクションラーニングが上陸する前のものです。今、考えると、テーマの選定の段階「表面上の問題から根本的問題、あるいは真実のも目的を明確にする。」というステップで活用すると気づきを与える有効なツールとなると思います。

アクションラーニングのテーマはシングル(最初にテーマが与えられる場合)とマルチプル(セッション参加者がそれぞれ自分の問題をテーマとして提起する場合)とがあります。
上記の課題解決ステップはシングルですが、マルチプルでセッションを継続的に行う場合は、それ自体が簡略型の課題達成型QCストーリーとなります。

以下はブレークスルーステップの比較表です。

ブレークスル-
ステップ
現状打破・
経営革新
課題達成型
QCストーリ
アクション
ラーニング
(マルチプル)
1.根本問題・真の目的の把握組織プロフィールの作成テーマの選定問題の提示→問題の明確化
2.あるべき姿の設定、ギャップ分析アセスメントの実施攻め所と目標の設定問題の再定義
3.重要成功要因の特定と目標設定アセスメント結果の弱い点の改善目標方策の立案問題解決・選択肢の作成
4.改善案部門別改善計画又はプロジェクト計画成功シナリオの追及行動計画の作成
5.改善の実施改善の実施成功シナリオの確認(セッション後の行動)
6.効果の確認効果の確認効果の確認(セッション後の行動)
7.システムへ反映是正・予防処置標準化と管理の定着振り返り
8.レビュー/水平展開次のアセスメント反省と今後の定着次のセッション

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