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2008.08.13

ISO14001認証維持の費用対効果の検証

 2008年8月時点の日本のISO14001の認証取得件数は約3万事業所となった。
日経エコロジー8月号の特集に、この中より無作為に抽出した「全国3000事業所実態調査」のアンケート結果が掲載されています。

 アンケート実態調査によるとISOを通して本業の環境負荷に取り組んでいる事業所は85%である。ところが、認証取得・維持費用に対して期待するほどの効果がないと考えている事業所が半数にのぼります。

 どうしてこのようなことになるか自分なりに考えて見ると、ISO14001は環境マネジメントシステムつまり仕組みの規格です。認証取得時点では、業務負荷の関係から、環境リスク・法規制の順守を中心にシステムを組み、パフォーマンスの改善は組織内の紙・ゴミ・電気・水の使用量改善を主体に行います。しかし、このような活動は3年もすればやり尽くしてしまい、次第に環境マネジメントシステムへの関心が薄れていきます。
ISO14001の本来の目的は、二酸化炭素排出量の削減、グリーンマーケティング(環境配慮製品の開発や販売)といった、すなわち本業と環境パフォーマンスの改善にあります。
(これは、別の言い方をすると「環境効率の向上」とも言います。)

 一方でISO14001は、何に着目して環境負荷を削減するかは企業が個別に判断してよいことになっているので、誰かがトップにこのことを提言しなければ、環境経営(本業と環境の一体化)には移行できません。
これは、組織の担当者からはなかなかいいにくいことです。認証機関はどうかというとパフォーマンスまでは審査しないことになっている。規格が要求する記録文書があるかどうか、記述内容が要件を満たしているかどうかといったことに集中して、分かっていてもそんなことは言ってくれません。

 経営者にすれば、「高いお金を出した重箱の隅をつついているような状態=費用を払った割りには効果がない。」ということになります。
認証を取得・維持するためという意識のままでは、ISO14001は膨大な文書類を作成する負担を現場に押しつけるだけの無用の長物になりかねない。

特集では、この閉塞感を打開するためISOを経営に結び付けようと進化している、として次の事例を紹介している。

「CO2削減」・・・ゼナラルテクノロジー、サントリー、ミダック、興栄通信工業
  事業所内のエネルギーや廃棄物の使用をすべてCO2に換算して把握し、コスト管理と連動して削減を進めている。改善はエコポイントに変換し改善提案制度と連動させているところもある。

「経営との一体化」・・・ダイキン、キャノン、古川熱学
  本社が中心となって、製品開発や販売などの経営戦略にのっとって環境対策を立案する。

「スピード」・・・広島菱重興業、日本超硬
  本業の環境負荷低減の成果を上げるため2ヶ月で回るPDCAサイクルの導入や書類の簡素化を図る。

しかし、これはよく考えると、論理の矛盾ですね。企業側がどのようなことをしようとも、認証機関の審査員は環境パフォーマンスの審査をすることにはなっておらず、仕組みの審査だけしかできない、従って、企業側が懸命にこのような対応をすればするほど、認証維持審査の指摘と企業側の要求が乖離し維持審査が無駄のように感じることになる。
極端にいえば、ISO14001は企業にとって役に立つものにはなるが、認証審査は不要ということころに行きつく。

以下は対応策ですが、この状態から脱出するには3つの方法があります。

1.成熟審査に移行する。
 ISO14001の認証維持審査では、パフォーマンスの改善指摘は期待できない。そこで、内部監査でこれらの評価を行い、認証機関からは先進的サーベランス・更新審査手順=成熟審査の認証を受ける(JAB RE301-2006 付属書3 参照 )。成熟審査は自己宣言と第三者審査の中間にあるもので認証機関のサーベランス工数は1/2~1/3となる。
しかし、成熟審査を受けるには、3年以上継続して審査登録証が維持されていることや質の高い内部環境監査システムが必要で、これまで合格したのはNECやトヨタ自動車など数社しかありません。

2.エコアクション21に移行する。
 エコアクション21はISO14001の簡易版ではありません。環境側面の抽出や文書管理の部分は簡易ですが、ISO14001が要求していない、二酸化炭素排出量などの環境パフォーマンスの継続的改善、情報公開を要求事項として規定しています。
また、登録維持費用はISO14001の1/2~1/5ですみます。長野県をはじめ、多くの自治体がISO14001からエコアクション21に移行したのはそのためでしょう。
しかし、エコアクション21は、もともと小企業や自治体向けに開発された環境マネジメントシステムですので、中堅規模以上の企業にはふさわしくないかも知れません。

3.自己適合宣言に移行する。
 エコアクション21や成熟審査に移行するには”一寸”と考えられている事業所には、内部監査を充実させ、自己適宣言に移行する。
但し、内部の自己評価だけでは言いにくい点のトップへの提言が不十分となるし、また、外部の信用度も薄い。そこで、外部評価の活用と環境活動レポート等の情報公開を併用して実施する。
外部へ支払う費用は、認証取得維持の場合の1/5程度で可能となります。

私は3項をお勧めします。次回は「3.自己適合宣言への移行」の実例を紹介します。

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コメント

7月29日付で経済産業省が「マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン」を公開しました。
この内容は、このブログで述べているISO認証制度の問題点と同じですね。
<骨子>
1.ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)をはじめとするマネジメントシステム規格認証制度は、企業等の組織に品質向上、環境配慮等のための然るべき体制が存在することを国際規格に基づいて実証するものです。
2.しかしながら、最近ではマネジメントシステムの認証を取得した企業において認証に係る不祥事が頻発し、制度がこうした不祥事を抑止できていない点が問題視されるなど、社会の制度に対する信頼感は高まっているとは言い難い状況にあります。
このため、経済産業省では、制度の信頼性を確保するため、認定機関、認証機関をはじめとする関係者が取組むべき事項について昨年9月から関係者とともに検討を重ねてきたところです。今般、パブリックコメントを経て「マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン」として別添の通りとりまとめました。
3.ガイドラインは、制度全体の【情報公開の充実】や、形式だけでなく【パフォーマンスに着目した審査の徹底】を進めること等を通じ、制度を社会により分かりやすいものとすることを求めています。今後は、ガイドラインの具体化・実行について、認定機関、認証機関等による自主的検討が進められ、ガイドラインの目的が達成されることを期待しています。

投稿: がまがえる | 2008.08.27 11:13

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