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2008.05.08

サスティナブル経営

 日経エコロジーによると、環境コミュニケーション報告書のタイトルは、2004年には「環境報告書」がトップであったが、2006年には「CSR報告書」「CSRレポート」がトップになり、今年は、トップには、まだ至っていないが「サステナブルレポート」という名称が少しずつ増えている、とのこと。
どうしてサステナブルレポートという名称になるのだろうか、事業継続マネジメント(BCMS)とどんな関係があるのだろうか、と疑問に思っていると、丁度タイミングよくAmazonから「サステナブル経営」という本の紹介メールがきた。

買ってみると2004年5月 日本地域社会研究所編集・発行した意外と古い本で19人の筆者が色々の角度から持論や事例を紹介している。
読んでみると「サステナブル経営」とは、企業経営の問題ではなく、地域社会の持続性のことを言っており、事業継続マネジメント(BCMS)とも直接関係がない。正確には「サステナブル・コミュニティ・マネジメント」のことである。
しかし、企業が発行する「サステナブルレポート」も、「サステナブル・コミュニティ・マネジメント」の一環であることには違いはない。
企業には以前からCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)という言葉があった。しかしCSRというとコンプライアンスを中心としたリスクマネジメントに間違えられる恐れがあるので、これを嫌って「サステナブルレポート」としているようである。

企業におけるサステナブルとは
 「企業は、コミュニティの構成要素の一つであり、社会の持続可能性の中の一つに企業も含まれる。持続可能なコミュニティを構築するには、企業自身のサスティナビリティ(持続可能性)を向上するためのマネジメントシステムを構築するだけでなく、企業が有する技術力、資本力、人的資源を活用して、社会のサスティナビリティを向上させるための提案や取組を行う」ということで、広い意味のCSRである。
この考え方を一番よく現わしたものが、今年度(第10回)環境コミュニケーション大賞を受賞したリコーのサスティナブルレポートの中の社会責任経営報告書の記述です。
環境コミュニケーション大賞の講評にも「リコーの社会責任経営報告書はCSRの基本的考え方が要領よく説明されていて、分かり易い」とある。

080507csr
リコーのCSRの考え方(クリックすると拡大します)

ところで、本題に戻って、この本の「サスティナブル経営」について概説します。

サスティナブル経営の背景:
 現代の社会は物質的な豊かさ甘受する一方で、地球規模では温暖化ももたらし、地域規模では水田や田畑を消滅させ、自然を破壊した。物質中心の市場経済の発達段階で人・物・金は都市に集中する。日本では政治経済の東京への一極集中が進み、広範に存在した地域の人材を収奪、親元を離れた彼等は核家族化し、人間疎外に悩み、人間性が希薄化する。
地方では地域を支えるべき人材に恵まれず、活力を失い、中央への依存体質を強める。コミュニティが失われ、伝統文化の継承が途切れる。
このことが、地域社会のサステナビリティ断絶の源である。

これは日本だけでなく先アメリカでも同じ、中国もインドも同じ道を歩もうとしている。
世界的にこのような問題意識が昂揚する中で、1991年、米国の都市計画家・建築家たちはニューアーバニズム運動として、カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にあるホテルで、まちづくりに遵守すべき原則「アワニー原則」を採択した。
その意味するところは、一つには、工業化や過度の開発や都市化により失われた、人と人とのながりを取り戻し、地域コミュニティの文化を特徴づける歴史・伝統、地域性・風土とのつながりを回復する。
二つには、地域の長期的な価値、及び地域を構成するコミュニティを最重要視する。
三つには、標準化・大量生産・資源多消費が礼賛されるのではなく、個性化、多品種少量生産、生活空間のヒューマンスケール、(車ではなく)歩行可能や情報による豊かさが重要。

「サスティナブル経営」とは、この原則に、沿って自治体・地域企業・地域住民・NPOなどが行うコミュニティ・マネジメントである。
具体的には、幾つかの角度からの視点と事例が紹介されているので、自分の感想を入れてその代表的なものを紹介します。

1. 田園都市コミュニティ
 コンセプトとしては、環境に配慮し衣・食・住のバランスのとれたコミュニュティであるが、この本では具体的イメージが明確ではない。最近、洞爺湖サミットに向けて首相官邸内に「温暖化問題に関する懇談会」ができ、その中に「環境モデル都市・低炭素社会づくり分科会」がある。そこでは各委員が出したモデル都市構想 第1回第2回 が載っており、これがその具体化なのだろうと思う。

2. ソーシャルガバナンスとソーシャルエコノミー
 我が国の政治・経済は戦後、政・官・財のトライアングルによるパブリック・ガバナンスにより成功してきた。しかしながら、その過程で、産業・金融・道路から地方財政に至まで、護送船団方式という政府による過剰保護体制を気づきあげてきた。バブルの崩壊とともに、その財政基盤も崩壊し、また、温暖化防止や脱資源消費という観点からも、もはや大量生産・大量消費を前提としたケインズ的市場原理主義では立ちいかなくなっている。EUを中心に、これに変わるガバナンスとして台頭してきたのはソーシャル・ガバナンスである。
ソーシャル・ガバナンスとは、非営利市民組織や地域コミュニティを通じての政府部門や市場との相互関係のガバナンスで、その経済的関係がソーシャルエコノミーであると言っている。
 なるほど、そういえば米国でも優秀な学生が企業に入らずNPOを目指すという傾向があると聞いた。現在の企業は利益を上げることを第一目的に掲げる。しかしNPOでは、地域社会や人々の幸福を助けることが第一目的であって、利益を上げることは目的を達成する手段である。このような活動形態が増えてくれば、物質の消費を抑えながら、社会の活力が上がるかもしれない。
ちなみに、ソーシャル・エコノミーの先進国スウェーデンでは非営利市民組織が約15万組織ある。これを日本の人口に直すと約200万組織、従業員は260万人、GDPでは26兆円となる。現状の日本の数値は、約9万組織、被雇用者18万人、生産額は約7千億円である。

3. 地域クラスター
 地理的に近接して立地する企業、大学、研究機関、公的機関からなるコミュニティで、事業体同士で取引、コミュニケーションを行う活発なチャンネルがあり、そのチャンネルは専門的知見の基盤、労働市場やサービスを共有する。クラスターの本質は知識コミュニティ、産学連携である。アメリカではテキサス州オースティン、日本では京都経済圏がこれに相当する。
私の地元にも北陸先端技術大学院が設立され、周りにハイテク団地が造成されているが、これが地元経済とどのように繋がっているかがよく見えない。地元の経済人の意識が高まって研究テーマを持ち込むようにならないと成功しないようにも思える。

4. コンパクト都市
 コンパクト都市とは、歩いて生活できる程度の範囲に都市機能を集中させた都市である。
そこでは生活の利便性をよくなり、不要な都市交通を排除し、また、地産地消によりエコノミーな生活もできるというわけである。
このモデルは、ヨーロッパ中世の都市、特にオランダにある。日本では三重県上野市(現在伊賀市)の城下町も、その例として紹介されている。私は、仕事の関係から伊賀市へは何度も行っているが、そう言われてみれば成程コンパクトにできていると認識できる。
コンパクトシティを目指した都市の再開発というのは、見方を代えれば過疎地を切り捨てるということでもある。
伊賀市も現在は市町村合併で、過疎地をいくつも抱えており、今更この政策を進めることもできないのではないかと自分で勘ぐっている。

5. エコビジット都市(環境観光都市)
 そこを訪れる人を知的感動に誘い、環境楽習ができるという都市づくりである。
この本には、日本最大の公共処分場が立地する茨城県笠間市をゼロ・エミッション都市にするエコビジット都市づくり構想が紹介されている。しかし、笠間市のホームページを開いてみたが、エコビジット都市なる言葉はどこにもない。うまく行かなかったのではないだろうか。
それよりも、私自身、昨年、滋賀県の長浜市や大分県の湯布院を訪れたことがあるが、こちらの方がよりエコビジット都市に近いような気がする。

6. 精密農法による知的営農コミュニティ
 わが国にとって、食の安全と自給率の向上は喫緊の問題である。
精密農法とは、情報技術を駆使して作物管理にかかわる多数の要因から高精度のデータを取得・解析し、複雑な要因間の関係性を科学的に解明しながら意思決定を支援する営農戦略体系のこと。 精密農法の概念とアプローチは1980年代末に欧米で発案・展開され,1996年の国際会議(ミネソタ)で精密農法(Precision Agriculture)と名称が統一された。
このことによって、生産性や収益性を維持向上させながら、環境保全型の持続的農業を作りだせる、と提言している。
そういえば、いつかNHKスペェシャルで、精密農法のドキュメントを見たような気がする。
農林水産省も平成18年度より「IT活用型営農成果重視事業」という名称で精密農法の普及をはじめたようです。

附録 精密農法の事例「埼玉県本庄市」
    東京農工大学 澁澤教授の精密農法の講演録

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