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2007.10.19

古紙100%は環境にやさしくない?

今月はリサイクル月刊です。
リサイクルに関する話題です。

先月、ある方より
「当社名刺に、一社員より『再生紙を使用しています。』という文言を付け加えた方が会社イメージと環境意識の向上によいのではとの提案がありました。しかし、横浜市のある有名なお寺さんの環境についてのホームページをみると
1)古紙配合率100%は、必ずしも環境にはやさしくなく、むしろ環境負荷が大きいということが、今では一般常識になりつつあること
2)製紙業界では古紙配合率100%の製品は生産されなくなっていること
が紹介されている。
再生紙100%の表示は逆効果でないでしょうか? 」
という相談を受けた。

ことのおこりは、新日本製紙グループが「古紙100%配合紙の製造段階における化石燃料由来のCO2排出量は、バージンパルプだけで作る紙の約2倍」と発表し、その後日経エコロジー誌がこの主張を6月にニュース記事として紹介したことにある。

Koshi_ところが、このほど発刊された日経エコロジー11月号では「リサイクルの競争力」を特集として取り上げている。
その中に「古紙100%でCO2が増加?」という記事で右のようなグラフが載っており、新日本製紙の主張を支持するような表現になっている。

この記事は新日本製紙のホームページの図1のグラフをそのまま転載したもので、新日本製紙の調査結果として
■バージン紙を生産する際にパルプの他に、製造工程で使える「黒液」と呼ばれるバイオマス燃料がとれる。この燃料は「カーボンニュートラル」、つまりCO2を増やさない。
これをカウントすると、古紙リサイクルの方がバージン紙の方がよりも1.6倍CO2を排出するとしている。
また、再生紙は森林保全など環境に良いといわれているが、森林認証を受けた取扱先から原料調達すれば問題ない。
と紹介している。

本当に、バージン紙の方が古紙100%よりもCO2排出量が少ないのだろか?
私は、この主張はCO2排出量の計算の範囲を、狭い範囲しか見ておらづ誤りがあると思います。

バージン紙と古紙との比較では

 第1点は「グラフには、古紙利用で森林伐採が少なくなることによる炭素固定減少量を算出して載せてない」ということです。
この点について、新日本製紙の発表は「森林認証を受けた取扱先から原料調達している(カーボンニュートラル)からカウントする必要がない」と主張されているようです。
しかし、発展途上国の経済成長に伴って紙の消費量が急増しており、カーボンニュートラルだけではバージン紙の原料が確保できない。
そんな関係で、日本製紙は古紙100%の看板を降ろしたが、王子製紙は降ろさない方針のようですね。
1つの製紙会社だけで考えると正しいようですが、もっと範囲を広げて製紙業全体を考えると違った答えが出てくると思います。

 第2点は、紙の使用後のCO2排出量のカウントです。
紙は使用後に分別回収されないときは、燃えるゴミとして焼却されCO2を排出する。
日経エコロジー誌の記事のように「バージン紙の方が、古紙よりもCO2排出量が少ない」と信じた人はリサイクルに回さず燃えるゴミとして処理するであろう。
一方、「古紙の方が、バージン紙よりもCO2排出量が少ない」と信じた人は分別回収に心がけるであろう。そして、分別回収しリサイクルした場合は、焼却しないので、その過程でCO2の排出がない。相対的に、その分だけCO2排出量が少なくなる。ところが、このグラフでは、その計算が含まれていない。

素人計算ですが、以上を考慮するとバージン紙を作る時に「黒液」と呼ばれるバイオマス燃料を使用したとしても、なお、古紙の方がCO2排出量が5割程度少なくなると思います。
以上の点について10月初め日経エコロジー社に質問状を出しましたが、まだ返答が返ってきません。
皆さんは、いかがお考えでしょうか。

以下は、自分の概算計算です。

<概算計算>
■バージン紙
森林によるCO吸収の減少:
 林野庁北海道支所ホームページより、木材体内の炭素量は概ね50%
とし、森林伐採が少なくなることによる炭素固定減少量を算出した。
 
内訳
 光合成(大気中からのCO2吸収)30% (0.3)
 土壌からの炭素吸収      20% (0.2)
 --------------------------------------
 CO2改善寄与分(その差)   10% (0.1)

バージン紙1トンあたり木材使用料約8トン
森林伐採後植林等により回復する割合を50%と仮定すると、
8×0.5=4炭素トン/紙トン
CO2改善寄与分 4×0.1=0.4炭素トン/紙トン
これをCO2排出量換算すると 0.4×3.67=1.468kg-CO2/kg
紙製造工程の化石燃料使用量(中小企業事業団より)
            CO2排出量1.559kg-CO2/kg
内訳 重油 0.25L/kg → CO2排出量0.725kg-CO2/kg
   電気 1kwh/kg→ CO2排出量0.834kg-CO2/kg
   使用後焼却     → CO2排出量2.440kg-CO2/kg
-----------------------------------------------------
合計 1.468+1.559+2.440 =5.467 Kg-CO2/kg

■古紙リサイクル
古紙100%のとき
森林によるCO2吸収の減少 CO2排出量 0.0kg-CO2/kg
紙製造工程の化石燃料使用量 バージン紙の1.6倍とする※
           1.559×1.6=2.494kg-CO2/kg
使用後原料として使用 焼却によるCO2排出 ゼロ
-----------------------------------------------------
 合計             2.494kg-CO2/kg

日本製紙のホームページ図1より
 
■即ち、kg-CO2は
 バージン紙  100 とすると
 古紙(100%) 46 と試算されます。


11月5日追記

 このブログについて日本製紙様へ内容確認を依頼した所、日本製紙環境安全部より、ご返答をいただきました。その内容について下記に掲載しています。

 ⇒ 古紙100%は環境にやさしくない?その2

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コメント

記載の製紙企業は、「環境問題は、うそ・・・」と指摘したいようですね。 自社の環境負荷だけをカウントして。
一般市民受けしそうな内容でインパクトを狙った記事を書くマスコミは困ったものです。 昔から、古紙の再利用はコストがかかると反対していた業界ですが、市民の環境意識の向上があって、いやいや進めたものですから、反論してくれる学者の言い分に乗っかって反撃に出たのでしょうか?
見事に論破して頂き、溜飲が下がる思いです。

投稿: 環蛙” | 2007.10.24 09:29

環蛙さま
コメントありがとうございます。
報道された記事は直観で「何かおかしい」と思い素人なりに調べた結果です。
かなりアバウトなので、おかしい点があれば、ご指摘ください。

投稿: がまがえる | 2007.10.24 13:09

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