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2007.01.28

ISOマネジメントシステム統合についてのご質問

私のホームページで「統合マネジメントシステムへの移行」というページがあります。
製造業の方でこのページを読んでくださり、自力で品質ISO・環境ISOのシステム統合をするため下記一連のeラーニングを受講いただいた方がおられました。
ご利用いただきありがとうございます。
 B01 ISO9001規格の理解(前編)
 B02 ISO9001規格の理解(後編)
 B03 ISO14001規格の理解 
 C03 マネジメントシステムの基礎
 D01 統合マニュアルの作成方法
 E03 監査技法
 
この方より、次のような主旨のご質問をいただきました。
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統合マネジメントシステムの相関図の見方について教えてください。
「経営方針」から下のほうへ「製品の実現」へ、その下に薄緑色で記載があります「支援プロセス」の品質・環境の該当各規格及びその下の「支援プロセス」と「環境マネジメントの支援プロセス」が並んでいる意味です。

Ims_model
① 「支援プロセス」とは品質:7.1、7.4、7.6、8.2.4、「環境」:4.4.6、4.4.7でしょうか。

② 先日e-ラーニングを申し込みまして「マネジメントの基礎」の第一章「統合に向けて」P9にISO9001をベースとしたプロセスモデルとして製造業における品質・環境統合マネジメントシステムの例が掲載されておりました。【A】
それから、すでにISO9001またはISO14001認証取得済みの皆様へとの中にやはりISO9001をベースとした統合モデルがございました。【B】
また、D01付属テキストマネジメントの構造10ページのビジネスプロセス図を修正するを拝見いたしました。【C】
各統合モデル【A】【B】【C】に若干の違いがございました。

弊社は製造業でございます。
従ってe-ラーニングに記載の統合モデルを基本にすることでよろしいでしょうか。
要求条項をいれて確認しているのですがどうも良く分からないものでご教授お願いします。
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お答え

この説明で、先ず分からないのはコアプロセス、支援プロセスという考え方であろうと思います。
コアプロセス、支援プロセスという考え方はマイケル・ポーターがマーケティング論で提唱し、その後ビジネスプロセスリエンジアリング(BPR)などで活用されてきたと聞いています。
日本経営品質賞アセスメント基準書では、コアプロセスを基幹プロセスと読んでいます。 日本経営品質賞アセスメント基準書2006年版63ページ「顧客価値創造のプロセス」に以下のような解説が載っていますので引用します。

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顧客価値創造のプロセスでは、顧客のニーズを具体的に創造する基幹プロセスと、これらの基幹プロセスの能力を高める支援プロセスから構成されます。基幹、支援プロセスともにプロセスの一端を担う外部の組織との協力関係が不可欠です。
製品・サービスの企画・開発、生産・提供、および顧客との取引維持強化といった基幹プロセスの一連の活動すべてが顧客価値創造にむけて整合され、一貫性が確保されていることが求められています。
成熟した商品が多くなってきた近年では、販売後の顧客へのアフターフオローが注目されています。また、顧客の求めるニーズとそれを実現する組織の能力を十分考慮した上で、独自のプロセスが構築され、顧客やビジネスパートナーのプロセスも含めた運営が実施されているかを重視することが必要です。
顧客が最高の価値であると認める製品・サービスを創造していくには、直接そのプロセスに関わる人たちが、価値創造に最大の力を発揮できるような支援を行うことも重要です。製品・サービスを創造する基幹プロセスを内部顧客としてとらえ、その事業の特徴に応じて、内部顧客に価値を提供するプロセスが支援プロセスです。
製品・サービスを効果的・効率的に提供していくためには、組織内のリソースだけではなく、外部のリソースを活用することも不可欠です。価値を共有できる適切なビジネスパートナーを選定し、そのビジネスパートナーとの対話を通じて関係を深め、長期的視点に立った優位性のあるプロセスを構築することが求められます。
なお、これらすべてのプロセスの構築と運営にあたっては、明確な目標の設定と目標を確実に達成していくマネジメント、継続的な改善やプロセスの革新が強く求められています。
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以上のことを読んでいただいた上で質問に対しての答えを補足します。

質問①について
 組織のコアプロセス(基幹プロセス)とは、顧客に付加価値を与えるプロセスで業種のよってISO9001の条項が若干違うかも知れませんが、7.2、7.3、7.5 が一般的であると思います。
製品・サービスを創造するコアプロセスを内部顧客としてとらえ、その事業の特徴に応じて、内部顧客に価値を提供するプロセスが支援プロセスです。
ですから、広い意味の支援プロセスは、7.1、7.4、7.6、8.2.4、以外に6.2、6.3、6.4、も入ります。

環境については、環境パフォーマンスを向上させるとことを、コアプロセスと考えそれをサポートするプロセスを支援プロセスにしてあります。
今は変わってしまいましたが、ISO14004:1996年版では、コミュニケーション、文書管理、運用管理、緊急事態への対応 がEMSの支援行動という章になっていました。
製品実現の下に、環境側面の運用管理が入っているのは、本業を通して環境パフォーマンス改善をすることをコアと考えて書いたものです。

質問②について
 確かに3ヶ所は製品実現のプロセスの記載が若干違っています。
製品実現のプロセスは、会社・会社によって違っていて、どれが正解というものはありません。
【A】は小さな会社で自社内での設計・製造をコアプロセスと考えた例
【B】は、中程度の会社で部品仕様を下請けに出して調達しており、調達と自社内の製造・組立・据付サービスまでをコアプロセスと考えた例
【C】一般的なサービス業の例 です。

自社は、何で顧客に付加価値を与え、そこから見返り(利益)を得ているかによって、製品実現のコアプロセスが違ってきます。

ISO9001規格では、自社のプロセスを明確にすることを要求しているだけで、どのようにプロセスを設定されていても要求された製品が仕様どおりに製作され顧客に提供できる限りは問題(不適合)ではありません。
ですから、貴社のありのままのプロセスを書いてあればよいということで、どのように書かれていても認証審査では問題が発生しません。

但し、どのようにコアプロセス、支援プロセスを設定するかということは、その設定の仕方によって生産効率が変わってきますので競争力の違いになって現れてきます。
強い競争力を持った会社は、他社が真似のできない卓越したコアプロセスを持っています。

なお、この考え方の立った品質・環境システム統合の統合マニュアル・手順書サンプルを下記にアップしてありますのでご利用下さい。

 ⇒ 統合マネジマントマニュアル・手順書サンプル集(ダウンロード一式2千円)

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