ISOの認証審査の限界
今日の不二家の不祥事に関する新聞記事を読むと、不二家ではISOとは単なるお飾り、必要悪と思っていたようにしか受け取れない。また、認証機関もそのことを指摘できていない。
読売新聞によると、
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不二家は2001年から04年にかけ、国内5工場で環境管理規格「ISO14001」の認証を受けた。06年6月には、本社の品質保証部と資材部が品質管理規格「ISO9001」を取得している。
協会は、消費期限切れの原材料を使った洋菓子を出荷していた時期が06年10~11月で、品質規格の取得直後である点を重視している。さらに、問題が判明して以降、埼玉工場で牛乳の在庫記録を残していなかったほか、札幌工場では原材料の仕入れ時期などを製造記録台帳に記載していないなど、品質管理のずさんさが相次ぎ明らかになっている。
また、不二家は11日の会見で、「埼玉工場はISO認証を受けており、廃棄物が一定量を超えると、是正報告書を書かなくてはいけないため、(消費期限切れの牛乳を)捨てづらかった面もあったようだ」と釈明した。
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とある。
どうして、こうなるのだろうか。これではISO14001認証取得はまやかしで、消費者は認証制度そのもから信用することができなくなる。
推測ですが、色々な場合が考えられる。
1)経営者は利益第一で本気になって環境マネジメントシステムに取り組む気がなかった。そのための資源(人・時間)を提供していなかった。
・・・ISO14001 4.4.1に対する不適合
2)ISOの事務局の人達はまじめに取り組むことを考えていたが、現場作業者にはその認識がなかった。つまるところ、環境教育がおざなりで、一部の人の活動で全員の自覚にまで至っていなかった。
・・・ISO14001 4.4.2に対する不適合
3)賞味期限が切れたものを使わないということが決められたていなかった。
・・・ISO14001 4.4.6に対する不適合
以上のような場合であれば、ISOの認証審査や内部監査で指摘できるような気もするがどうしてできなかったのだろうか。
4)賞味期限の切れたものを使わないということが決まっており、現場担当者もよく知っていた。しかし、これを公にすると大幅な損失が表面に出て、誰かが在庫計画のミスの責任を取らねばならない。工場長から仕損費用のことで叱られる。是正処置書を発行すると上司からもいやな顔をされる。
こういう場合は、見てみぬ振りをすることが、職場内で暗黙のルールとなっていた。
・・・この場合は、企業文化に根ざしたものですので、ISO審査では発見できないかも知れない。
経営品質にでも取り組んで、意識改革をすることが先決だろう。
でも実際にはこんなケースの場合が多いのではないだろうか。JCO・雪印・三菱自動車・パロマ、全てこのケースであったような気がする。
JABのホームページで認証機関を調べて見ると不二家のISO9001の審査をしたのはSGS,ISO14001の審査をしたのはJACOである。
経済産業省が認証機関の関連団体に対して臨時の審査を要請しているのと報告されている。
JACOとSGSは不二家に対する臨時審査だけでなく、今回の問題を審査機関自身がどうして発見できなかったのか、認証審査・定期審査のどこに問題があったのか、その原因も分析して公開してもらいたいものだ。
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コメント
がまがえるさん、こんにちは。 環蛙”です。
不二家の消費期限切れ原料使用問題を、ISO14001で語るのは無理があるかな?と思います。 審査機関はおそらく、これは品質(ISO9001)の範疇だから・・・と遠慮するでしょう。
4.3.3 目標「廃棄物の削減」に関連して実施計画を立てた中に、「製造計画の明確化と原料の計画的調達」とうたってあれば、内容は確認するはずですが・・・。
4.3.2 法的・その他の要求事項に関し、環境関連の法律は特定しても食品衛生関連は環境ではないと除外したのではないかと推測します。
一刻も早く、品質(ISO9001)を国内5工場で取得させ、品質第1を掲げることが再生への第一歩ではないでしょうか?
投稿: 環蛙” | 2007.01.15 10:02
環蛙さん、こんにちは。
ご意見ありがとうございます。
ISO14001 用語の定義では
3.5 環境
「・・・人及びそれらの相互関係を含む、組織の活動を取り巻くもの」と定義されており、製品の環境側面を特定していく中で、「消費期限の管理」という環境側面が出てくる。
環境影響としては「人の健康」となり、順守すべき法的要求事項の関連で当然「著しい環境側面」になると思ったのですが・・・。
そうですか。
一寸、話の展開に無理があるかも知れませんね。
投稿: がまがえる | 2007.01.15 20:35
こんな動きもあります・・・。
「不二家」の不祥事が次から次に出て来た為か、
「ISO」の再審査問題から、機関への不信まで、
色々とにぎやかですが、
食品業界の一部には、こんな動きもある様です。
(こちらは、ISOの補完手段としては有効かも?)
「不二家」もコレをやっておけば、よかったのにネ・・・。
キーワードは、
「情報の公開」 「トレーサビリティ」 「第三者の視点」の3つ・・?
↓↓↓↓
http://fsr.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_5649.html
TVニュースでの「映像」は、こちらに。
↓↓↓↓
http://www.youtube.com/watch?v=fa9BwUFMOXo
投稿: TOMY | 2007.02.04 09:35
こんにちは。
確かにISO14001の外部審査で必ず発見できるかというと難しい領域だと思います。
(内部監査では容易に発見できそうですが)
>3)賞味期限が切れたものを使わないということが決められたていなかった。
> ・・・ISO14001 4.4.6に対する不適合
4.4.6で指摘して、まず問題ないでしょう。
そもそも廃棄物の量は監視・測定の対象になっているでしょうし、
本来捨てるべき「期限切れ原材料」を廃棄物として管理せず、
原材料として(意図的かもしれないが)誤使用したのですから、
該当する運用手順に違反しているはずです。
もしも「期限切れ原材料」の数量の管理や処分方法について
著しい環境側面にも、環境目標にも、監視・測定にも取り上げられて
いないとすれば、EMSとして重大な欠陥があると判断するべきです。
食品工場で、製造途中や製造後(出荷前)で発生する廃棄物以外に
原材料の廃棄物が全く考慮されないことはあり得ないですから。
審査の限界としては、「会社として当たり前すぎる側面」に対して
監査計画上は多くの時間を費やさないのは仕方のないことです。
結果論として、サンプリングによる審査の限界は認めざるを得ないでしょう。
しかし、ISO14001を監査基準とした審査において、
「廃棄物の誤使用」がどの要求事項にもあてはまらず、不適合と指摘できない
という誤解は、あってはならないことだと思います。
投稿: ISOガバ | 2007.02.13 16:28