学習する組織 その7 チーム学習
前回までに「自己実現」「メンタルモデル」「共有ビジョン」の話をしてきました。
ここまでくると、次に行なうのが「チーム学習」となります。
日本では昔から「三人寄れば文殊の知恵」と言われてきました。ところが実際には、専門家集団といわれているところで、その逆のことが起る。
先の、ワールドカップサッカーでも日本チームは、1人1人の技術レベルが高いが、チームとしてはその実力が出し切れなかった、と言われています。
ビジネス界では1人ひとりのIQが120を超えていても、チーム全体ではIQ85の力しか発揮できないことがあります。
チーム学習はそのパラドックスに立ち向かい、一人ひとりのIQが85であっても、チーム全体としてIQ120を発揮することを目指します。
チーム学習は、ダイアログから始まる。ダイアログは、メンバー同士が個々のメンタルモデルを保留して共同思考に入るために必要なプロセスです。
チーム学習が大切なのは、現代の組織では個人ではなくチームが学習の基本単位だからです。チームが学べなければ、組織は学ぶことができない。
以下は「学習する組織」326ページからの引用です。
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ダイアログの理論によれば、チームや組織の力の衰えは、人々がどのように世界を見るかという認識の危機的な状態を反映している。
「意味」を生み出すうえでの自然なメカニズムとして、人は世の中のさまざまなことを頭の中で分類して、いろいろな区分やカテゴリーに当てはめて理解する。その区別によって、あたかも催眠術をかけられたような状態に陥り、初めからそのような区別が存在したのではなく、自分たちが便宜上そういう区別をしたのだということさえも忘れてしまう傾向がある。
「経済が崩壊しつつある」とか「自分たちは悪くないが、他の部門が腐敗しきっている」という思いが自分たちにとっての現実になり、その現実が、自分自身の意思とは何の関係もない独自の力をふるうかのように思えてくるのである。
このような「思考の断片化」は、人間の営みのあらゆる分野を汚染しているウイルスのようなものである、ほとんどの分野の専門家たちは、専門領域を超えた話し合いができない。営業部門は製造部門を問題と見なす。 経営管理者は「考えること」を求められ、一方で、労働者は「行動」を求められる。人は一緒に考える代わりに、自分たちの「部分」の利益を守って、他の人たちを論破しようとする。
もし「断片化」が今の時代の条件だとすれば、ダイアログはその断片化によって生じる思考を離れるための、ある程度有効性が証明された戦略とも言えるだろう。
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ダイアログはギリシャ語の「ダイヤ」(・・・・と通して、お互いに)と「ロゴス」(言葉)と言う2つの語源から派生したもので、それは「意味が流れて通る」ことを意味しています。
以下 表1に、ディイスカッションとダイアログの違いを示します。
ダイアログとディスカッションの中間にスキルフルディカッションがあり、オフサイトミーティングなども、その一種だと思います。
表1 ディイスカッションとダイアログの違い
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ディスカッション(討論) ダイアログ(対話)
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「2者間の間をピンポン玉が行ったり 「意見交換の目的は、我々の思考に
来たりする卓球ゲームのようなもの ある矛盾を明らかにすることである
決定が目的 意味の共有が目的
一つの解決を求めるために話しあう 物事の意味を発見するために話し合う
一つの意味に同意を得る 皆で意味を共有する
収束型の会話が行なわれる 拡散型の会話が行なわれる
主張する、説得することを重視 探求によって学ぶことを重視
部分に注目 全体を最優先
問題を部分に分割する 部分を見て全体を理解する
部分間の違いを見る 部分同士のつながりを見る
仮説を正当化し防衛する着目 仮説を提示し、探求する
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実際にダイアログをやろうとすると、その手法を良く知った人がいないと中々難しい。
ピータセンゲは本書の中で、よく、「あるテーマに関して私たちはダイアログをしました」と言う人たちがいるが、実際にどのようなやりとりが行なわれたか記録を調べてみると、それはダイアログであることはめったになく、スキルフルディスカッションにすらなっていないケースが殆どである、といっています。
ダイアログを組み込んだ、チーム学習手法として「アクションラーニング」があり、「学習する組織」を構築するための方法論として注目されています。
アクションラーニングにより得られる効果には以下3つが挙げられる。
一つ目は、実際の業務で抱えている問題を取り上げることによって、問題の解決および問題解決能力をテクニカルに育成することができる。
二つ目は、問題解決スキル、効果的なチームワーカーとしてのスキル、リーダーシップスキルなどの個人スキルが修得できる。
三つ目は、問題解決プロセスをチームで実施していく中で、チームにおける学習行動が促進され、そのチーム学習が、個人学習、そして組織学習へと転換されていくことで、学習する組織を構築していくことができる。
なお、私(がまがえる)は、GIALの認定ALコーチ(ファシリテータ)でもありますので、ご希望の場合はお手伝いさせていただきます。
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