学習する組織 その4 メンタルモデル
メンタルモデルとは、私たちの心の奥に住みついているイメージや仮説のことであり、私たちが世界をどのように見るか、意識づけるかと言った認識を形作るだけでなく、どう行動するかまでをも決定する。
問題なのは、それが単純化されたモデルになり、意識の下に隠れて暗黙の了解になっていることである。
例えば、ビジネスの中で長年にわたって幅を利かせてきた原則や常識は、支配的なメンタルモデルとなって企業の変化を妨げている。
それを検証して、正しいメンタルモデルを形成する必要がある。
メンタルモデルの例
<うまくいった例>
キャノン(御手洗社長) 部分最適にメスを入れ、全体最適に導く
ホンダクリオ新神奈川 会社は家庭、社員は家族
<問題を起こした例>
改革前の日産自動車 悪いのは自部でなく、どこかの部
村上ファンド(村上世彰氏) 会社は株主のものである
ライブドア旧経営陣 法すれすれでも儲ければ勝ち
以上は会社全体の話ですが、最近聞いたもう少し身近な例では、多くのISO審査員は「審査では付加価値のある指摘しなければならない」と思い込んで審査をしている。
ところが、受審側かからから見ると付加価値ではなく負荷であったり、適合審査の何でもない一言が付加価値であったりする、ということがあるらしい。
では、どうすればメンタルモデルを変えることができるかというと「内省」と「探求」と言う2つのスキルを身につけることが必要になる。
「内省するスキル」
考えるスピードを緩めて、自分がメンタルモデルを形成した過程をはっきりと意識すること
「探求するスキル」
自分たちの見解をオープンに分かち合い、お互いの考え方の前提を理解するための話し合いをすること
フィールドブックでは、このスキルを習得するツールとして「推論のはしご」と「左側の
台詞」の2つを紹介している。
「推論のはしご」
抽象化という飛躍
・ある事実から、しばしば人を誤った思い込みへと導く、心の通り道
・自分の経験や観察から、検証されている自分なりの結論を導いてしまう
・観察可能な事実や経験から、はしごを駆け上がるように抽象化された結論に進んでしまう
これを「推論のはしご」という。
以下はフィールドブック220ページの引用です。
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私たちは、さまざまな物事に意味を付け加えたり結論を出したりすることなしには生きていけない。それをしない生き方は効率が悪く、骨が折れるだろう。『内省のスキル』と『推論のはしご』を使って、次の3つの方法でコミュニケーションを改善することができる。
1.自分自身の思考と推論に対する意識を高める(内省)。
2.自分の思考や推論を、他の人に見えやすくする(主張)。
3.他者の思考や推論に関する探求を行う(探求)。
部長と私がともに『推論のはしご』の背景にある考え方を理解することができれば、会話の流れを止めて、適切なかたちでいくつかの質問をすることができる。
■今の言葉は、どのような具体的事実にもとついているのですか。
■その事実の内容について、誰もがそのとおりだと認めますか。
■あなたの考えの道筋を教えていただけますか。
■その事実から、どうやってそのような推測に至ったのですか。
■あなたは「○00(=あなたの結論)」とおっしゃいましたが、
それは「△△△(=それに対する私の解釈)」ということですか。
私は相手に対して、イエスあるいはノーではない答えを引き出すごとで事実を求めることができる。
「このプレゼンテーションをどうお感じになりましたか?」
また、自分の推測を検証することができる。
「退屈でしたか?」
あるいは単純に、観察可能な事実を検証することもできる。
「何もおっしゃいませんでしたね」
それに対して部長は、「うん。私はノートをとっていたんだ。こんな話が大好きでね」と答えるかもしれない。
「あなたは推論のはしごのずっと上まで上がってしまわれたようですね。下りるには、こうしたらいいですよ」というような言い方をしないように注意すること。
-------------------------<引用終わり>--------------------------------
一方「左側の台詞」と言うのは、うまく行かなかった会話を記録しておいて、右側に本当の会話、左側に陰の声(本音)を書いて、自分がこのように書いた本当の原因は何かを追究していくものです。
印象ですが、これらの方法を実際にやってスキルを習得しようとすると、かなりの忍耐と努力が必要のようです。
フィールドブックにはありませんでしたが、その後に急速に普及しつつある方法でアクションラーニングという方法があります。
私は、昨年アクションラーニングの日本の家元であるGIALのコーチ認定コースを修了しました。
興味のある方には、こちらの方をお勧めします。
⇒ アクションラーニング GIALのホームページ
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